認知症介護の現場あるある!パンツ後ろ前事件【認知症母との介護生活#33】
60代主婦の日常を、4コママンガとエッセイにしてブログで配信をしている、ぱいなっぷりんさん。その中から、「認知症母との介護生活」を順に紹介していきます。
▼「認知症母との介護生活」マンガ 1話から読む▼
>>想像の遥か上を行く発想をする母に、考えたことは?【認知症母との介護生活#1】散歩中に気づいてしまった
この パンツ後ろ前事件は
実話です
母と外出する時
私は
いつも 慌てる
時間を見計らって
準備をしているつもりでも
母は
直前になって トイレに駆け込んだり
1分前に手渡したはずの かばんや鍵を
なぜか 持っていなかったり
いい感じになるように
選んであげた 服を
勝手に 着替えていたり
やっとやっと 玄関を出ても
先刻までしていた マスクを
いつの間にか 外していたり
玄関サンダルを 履いて出ていたり
そんなこんなで バタバタしていると
今度は トイレに行く
と 言い出したりして
玄関を出たり 入ったり
を 繰り返す
まるで
壊れた鳩時計
そんな母に対して 私は
可能な限り
穏やかな態度で 対応するように
心がけ…
つつも 頭の片隅では
…ったく ボケてんだから
という言葉を
リフレインさせている
母は 私を頼る人
私は 母から 頼られる人
この立ち位置は
この先
永遠に固定化されて 変わらない
と
思っていた
…んだけど
私の中で
その常識が
パンツ後ろ前事件で
崩壊した
その 後ろ前である事実に
気がついた時
周りには
何人かの人が 歩いていて
私は
その人たちから
パンツ後ろ前女
として
嘲笑の視線を浴びているような
そんな気がして
その場で 固まってしまった
急に立ち止まった 私に
母が 不思議そうに
どうしたの?
という視線を 送ってくる
パンツ
後ろ前に 履いてきちゃった
と 言うと
母は 私の下半身を一瞥し
あら ホントだ
でも 全然わからないわよ
ゆるいズボンだし
と
どうってことない という感じで
言った
はあっ?
わかんないわけないじゃん!
それは
おかあさんが 認知症だからでしょ!!
母の言葉に
心のなかで 逆ギレする私
でも
母に言われて 見てみれば
確かに
ポケットの位置は
どうしたって 違和感あるけど
パンツの お尻のカーブには
見事に 私の出っ腹が収まり
タイトにつくってある お腹側は
年齢と共に垂れてきた お尻のせいで
それなりにフィットしている 気も
私は
ワイドパンツは
シャツをインして履くのが
理想形だと思ってるけど
インするほど
ウエスト周りに 自信がないので
シャツの裾を 少し たくし上げて
短めにして着ていた
それを伸ばせば
ポケットが 半分くらいは隠れる
ってか
そもそも
ご近所を歩くひとの 服装なんて
誰も 気にしていないだろう
急いでいたり
考え事をしていたりしたら 尚更
ひとらしきもの
という程度の認識しか
もたないことだって
そう 思い至ったら
恥ずかしい気持ちが
徐々に 薄れてきた
逆に
おバカな行動をしでかした
自分に対しての 不信感に
襲われた
正直に 言おう
私は 今までも
シャツを
裏返しや 前後逆で外出したことが
あった
でも
パンツはなかった
だって パンツは
間違って履くと 違和感があるので
すぐ気づいて 履き直すから
それが
年齢と共に 体型が変化し
むしろ 前後逆のパンツにこそ
身体がフィットし
気付かずに 家を出てしまったのか
であるとしても
母との 帰る道々
私は
母の足元に 気を配り
いつでも母を支えられる
体勢を取りながら 歩き
考えていた
私は 認知症ではない
たぶん
今のところは
だけど いつ
母のいる 向こう岸に
渡るかわからない
その資格は
どうやら 十分 ありそうだ
冒頭で
出かける前 母がやらかす
いろいろな失敗について
上から目線で 書き連ねたけど
よくよく 考えたら
それらは
決して 母だけでなく
頻度は違えど
私もやらかしていることだ
もし いつか
母娘共に
玄関先で 出たり入ったりを繰り返す
壊れた鳩時計
と 化した時
こちら岸から見える 景色は
それは それとして
本人たちにとって
その状況は
絶望だろうか
それとも
平穏だろうか
▼次回は明日配信予定▼
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