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「“その日”までの16日間」看取りのプロ、そして娘としてやるべきことは?尾崎英子さんのエッセイ『母の旅立ち』より

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ゆうゆうtime編集部

母に振り回された子供時代—それでも否定されなかった

「何の相談もなく転校を言い渡された三日後に、わたしは六甲の小学校に転校した」
教育だけには熱心で、本人にも何も言わず突然転校を決めてくるなど、母の突飛な行動に振り回され続けた尾崎さん。

「知る人ぞ知るすっばらしい塾」に通うために突然神戸に転校を決めてきた母。教育だけには熱心で、ただし本人には何も言わずすべて独断と偏見で決断してきてしまいます。

ただしその反動のせいか、子供時代尾崎さんは自分のことを「自分の人生は自分がどうこうできるものではないという気持ちがつねにあり、慢性的にぼんやりしていた」と理解しています。
そのため、成績は「えいちゃん、びっくりするくらい成績が上がらんのね‼」と驚かれたそう。ですが、母はそう言いながらも「ポテンシャルは高い」と信じていたのです。

「母から否定されたことはほとんどなかった」
上の3人の姉たちとは違い、末っ子の尾崎さんは甘やかされていたようです。接点が少なかったからこそ、「よく知らない子」として扱われていたのかもと振り返ります。

幻聴の中のイタリアの音楽—母の脳転移がもたらしたもの

「この音楽聞こえない? ほら、イタリアの音楽よ」
京都のサ高住へいよいよ移り住むための移動中、母は無音の車内で音楽が聞こえると言いました。痛みに悶えていた母が、ほんの一瞬、幸せそうな表情を見せたのです。

「母の頭の中には、カンツォーネのようなものが流れていたのかな」
脳転移による幻聴かもしれませんが、それは痛みを和らげるための脳の防御反応だったのかもしれません。 そこでも母のトンデモ行動が発覚。なんとお医者さまから出された痛み止めのためのお薬を一切所持していなかったのです。

「どういうメカニズムがあるのかわからないけれど、強烈な痛みを和らげるために生まれた幻聴だったのか。そうだとしたら、人間の体はなんと賢く、優しくできているのだろう。」
尾崎さんは感想とも願いとも判別できない感情を抱いたといいます。

父と母の関係、そして旅立ちの日…

四姉妹はどう母の旅立ちを迎えるのか、そして夫である父の介護は?いろいろな課題が一気に押し寄せる尾崎家。このあとは書籍でぜひ。

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『母の旅立ち』

尾崎英子 (著)
CEメディアハウス(刊)

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