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介護中に生まれる認知症母との摩擦…感情整理のヒントとは?【認知症母との介護生活#36】

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更新日

ぱいなっぷりん

60代主婦の日常を、4コママンガとエッセイにしてブログで配信をしている、ぱいなっぷりんさん。その中から、「認知症母との介護生活」を順に紹介していきます。

▼「認知症母との介護生活」マンガ 1話から読む▼

>>想像の遥か上を行く発想をする母に、考えたことは?【認知症母との介護生活#1】

叔母夫婦にリフォーム後の家をお披露目したときのこと

最近
時間の経つのが 早くて

ちょっと ブログ 描いてないなあ

な~んて思って 日にちを見ると
もう3週間も 経っていたのね

おかしいなあ

自分の中では
5日くらいの感じだったのに

もしかして
宇宙人に 拉致されてたか
自分

新しい経験で 溢れた
刺激的な時間

というのは
ゆっくり流れる という

だから
子どもの頃の 時間の流れは
とてつもなく 遅いし

大人になっても

例えば
非日常を過ごす
旅行中の 時間は
ゆっくり流れる感じがする

私の 今の生活は
コロナ禍のせいもあって

家事や介護のルーティンを
こなすだけの

刺激なんて 微塵もない日々

当然
時は 高速で過ぎ去る

3週間が 5日に
感じられるくらい

私の 「時間」という名の水は
蛇口全開で ダダ漏れ状態

そんな中

私にとっては
久しぶりに ちょっとした
非日常のイベントがあった

浴室工事中 ずっと
お風呂をお世話になった
叔母さん夫婦を ご招待して

母の部屋の
お披露目会を したのだ

叔母夫婦は

手すりや バリアフリーの床など
母の利便性を最優先にした
今回のリフォームを 見ながら

私へのリップサービスも あるだろう

〇〇ちゃんは やさしいわねえ
おかあさんのために こんな工事して

お姉さん 幸せねえ

などと 言ってくれるんだけど

その言葉に

まあね~

と 曖昧に応えていた
母が

私が その場を離れた 途端
大きなささやき声(!)で

本人は 耳が悪いので
まさか 私に聞こえている とは
思ってないんだろうけれど

ささやいたのだった

でもねえ
いずれは 自分の部屋になる
ってことも
思ってるはずよ

とか

食費とか 住居費とか
あの娘も 助かってるはずだし

等など

それ
ぜ~んぶ 聞こえてるし

ムッとしながら 思う

そんな言い方 されたら
私だって
言いたいことは
てんこ盛り あるわよ

ポケットを叩けば
ビスケットを出すように
いくらでも 出てくるんだから

でも

と そこで
理性的な私が 顔を出す

90歳 認知症母と
同じ土俵に立ってもね

それに
険悪な雰囲気になって
叔母たちに 気を遣わせるの
大人げないしね

私は
喉まで溢れそうな 言葉を
ぐっ と飲み込んで

何も聞こえなかったように
振る舞った

だけど
その後

その時のことを 思い出す度に
怒りが湧いてきて
気持ちが どうにも治まらなかった

もし 母がいなくなったら

そりゃ
お風呂も トイレも 隣りにある
一番便利で居心地いい その部屋を
空けておくのはもったいないもの

私が 使うようになるかもね

食費とか 住居費のことについては

そりゃ
助かってる部分も あるけれど

そういうことを言い出したら

じゃあ 私が全面的に担っている
日々の介護は
お金にしたら おいくら万円?

と言いたくなる

ああ ホラ もう
こういった言葉を 文字にした途端
PCの画面から
殺伐としたムードが 立ち昇る

世の中には

ウソではないけど
口に出したらおしまいな言葉 が
ある

ひとは 生きていれば
醜い感情や 打算 計算と
無縁ではいられない

それは それ

人間は そういう生き物

ということを 先ずは認めた上で

それに 小綺麗なカバーをかけて
直接は 見えないようにして

カバーの下にあるものを
意識しつつも
そのことには 触れない

それは
心遣い というもので

社会の中で お互い
気持ちよく暮らしていく上での
知恵じゃないのかな

でも
母は認知症

心遣いとか
知恵とか
そんなものは とうに捨て去り

感情の赴くままに 言葉を吐く

ずるいよね 認知症

そんな感情が
頭の中で ぐるぐると渦巻いていた時

友人 Aちゃんから
電話をもらった

そのタイミングは
Aちゃんにとって まさに

飛んで火に入る 夏の虫

私は 溜まっていた感情を

ぶぐわ~っ

と 吐き出しまくった

ずっと 黙って聞いてくれていた
Aちゃんは
私の言葉が止まったのを
見計らって

でもさ
ちょっとした 見栄とかで
身内を卑下したりすることって
あるよね

特に 昔のひとはさ

ポツリと そう言った

私にとって
その言葉は
ちょっと 目ウロコだった

そういえば
ほんの数十年前まで
日本語には

愚妻 荊妻 愚女
愚息 豚息 豚児…

な~んていう謙遜語が あったっけ

今の感覚からすると
完全に アウトな言葉だけど

でも 母は
確かに そういう時代を
生きてきたんだよね

Aちゃんは 言葉を続けて

お母さまも
叔母さんに対する
見栄とか プライドとか

そんなものがあって

つい 心にもないことを
言っちゃったんじゃないのかな

そんな 俯瞰した目で
母の気持ちを想像する なんて
発想にもなかった

Aちゃんの言葉に
私の気持ちは
ちょっと 落ち着いた

Aちゃん
ありがとう



ちょっと
心の余裕を なくしてたかも

決して
忘れていたわけじゃないんだけど

母と過ごす日々の中で
疲れたり 傷ついたり
心がすり減ることが
あって
少し 見えなくなっていた

でも

これは
絶対 確かなこと

母は
私にとって
大切な ひと

▼次回はこちら▼

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