築35年の団地に住む理由。「絶対”ない”と思った」家だったけど…身の丈にあった暮らしと幸せの見つけ方
大切なのは心地よく、健やかに暮らせること
「その頃、家賃相場が上がり予算に見合う物件が見つからず、部屋探しに疲れていて。『安いし、一度見てみたい』という夫の希望で再び訪れたとき、以前とは別の角度から見ると日当たりがいいことに気づいたんです。明るくて、外の緑がとてもきれいで。想定していなかった振り分けタイプの間取りでしたが、南向きで2DK 53.3㎡と広く、夫の職場まで30分以内、2階以上、収納が多いという希望も満たしていました」
住んでみると苦手だった和室も、「洋のものを合わせても決まりすぎないし、違った雰囲気が楽しめていい」と思えたとか。
「あと、何より落ち着くんですよね。気づくのが遅かったけれど、それはやっぱり実家に和室があったからだと思います」
「日が暮れたら周りは真っ暗」という、のどかな場所で生まれ育った須藤さん。高校時代、東京に強い憧れを抱き、卒業後に上京を考えたが両親は大反対。すすめられるがままに受けた地元の町役場の採用試験が不合格で、高校で学んだ簿記を生かし、念願かなって東京の会社で経理職に就く。約10年過ごし、紆余曲折あって大阪に移り住んで約10年、再び上京したのは43歳のとき。
「経理一筋だったので違うことに挑戦したくて。先を考えて計画できるタイプじゃないし、給料は服やバッグにつぎ込んでいたから貯金もない。それなのに早期退職募集で退職金が上乗せされると知って『辞めるなら今だ』と思ったんです。実は20代の頃、一度目の結婚をしましたが、数年で終わりを迎えたので、残りの人生をひとりで生きるために手に職をつけたいという気持ちもありました」
不安を感じつつも上京し、時代を見据えてWEBデザインの学校に入学。しかし、かつての職場と提携した派遣会社に紹介されるのは経理職ばかりで「辞めた意味がない」と就職活動に力を入れた。晴れてWEBデザイナー見習い兼WEBデザイン学校の事務として働くことになるが驚くほど給料が安く、貯金を切り崩しながら仕事をする日々。そこで10歳年下の現在の夫と出会い、46歳で再婚する。
「高校生の頃、母に『何もない平凡な人生より、波瀾万丈な人生を選びたい』と宣言したことがありましたが、図らずもそうなりました(笑)。でもフリーランスで働いている今、簿記もWEBの基礎知識も役立っているから、後悔はありません」
