意外な発見?認知症の母がアルバムで見せた驚きと切なさ【認知症母との介護生活#73】
60代主婦の日常を、4コママンガとエッセイにしてブログで配信をしている、ぱいなっぷりんさん。その中から、「認知症母との介護生活」を順に紹介していきます。
アルバムがつなげない記憶の糸
最近
椅子に座って
ぼーっ としている時間が
多い 母
まあ その事自体は
介護している側からすれば
ラクっちゃあ ラクなんだけど
でも
その間にも
母の脳内の
記憶を司る 神経ネットワークが
ブチブチと 切れていっている
(恐らく)
ことを考えると
娘としては
なにか 刺激を与えて
神経ネットワークが切れる量を
減らさなきゃ
な~んて 考えちゃうんだよね
やっぱり
で
折り紙や パズルを
やらせてみたり
懐メロを聴かせたり
そして 今回は
思い立って
母が 旅行で撮った写真ばかりを
集めた アルバムを
見せてみた
すると 母は
なんと!
他の 何よりも
はるかに 食いつきよく
旅行の写真を
集中して 見たのだった
そもそも 最近は
なにかに 興味を示すことも
少なくなっていたので
私としては
金鉱を掘り当てた 気分
写真をじっと見つめる母を
見ながら
昔を思い出して
エモい気分に浸っているのかな
しめしめ
この間に 夕飯の準備をして…
な~んて 思っていた
ん ・ だ ・ け ・ ど
母は
突然 アルバムから顔を上げ
深い深い 溜め息をつきながら
つぶやいたのだった
私
こんなところに 行ったの?
ぜんっぜん 覚えてないわ
にわかには
信じられなかった
だって
母は
非日常的体験が 大好きで
1ドル360円の時代から
バブルを挟み
失われたン十年の中盤くらいまで
時間と 体力と お金が
許す限り
全精力を傾けて
あちこち 旅行してたから
子どもの頃
旅行で
長期に家を開けては
笑顔で戻ってくる母を 見ながら
私も 大人になったら
母みたいに 旅行するんだ
何の疑問も 抱かず
そう 思っていた
実際
自分が 大人になった時
子どものことや
仕事のこと 家のことを
考えると
時間的にも 金銭的にも
なかなか 母のような余裕は
持てなくて
近場の
1~2泊の旅行はしても
例えば 長期の海外旅行などには
なかなか 手が届かなかったけど
一方 母は
そんな私に
私 もう 世界中
行きたいところは
ぜ~んぶ 行ったわ
と豪語し
あなたも 海外旅行に行くなら
若いうちがいいわよ~
などと言って
私の気分を 逆撫でしてきた
そんな
母娘の
平穏な(?)日々の中
同居している 母が
認知症を発病し
私の 海外旅行は
当面 お預けになった
いや それでも
母の状態が
今よりは 悪くなかった時
海外旅行に行く チャンスは
何度か あった
だけど その度毎に
まるで 私を
海外に行かせまい
とするような
怪奇な事件が 重なって
ある時など
涙なしでは 語れない
悲しい結末に
なってしまったのだった
そして
母の 認知症が進んだ
今
私が 旅行するのと
母が ショートステイに行くのは
ワンセット
でも
知り合いがいないのが
寂しいのか
お泊りすることに
激しく 抵抗を示す
それでも 何回かは
ショートステイに行ってもらい
私も
友人たちと 国内旅行を
楽しんだのだけれど
ショートステイに行く話をする度に
母は
テーブルに突っ伏し 嗚咽を漏らし
この世の終わりのように
嘆き悲しむのが
お約束
私は 毎回
悪代官になった 気分
この夏
ちょっとした事件が あった
私は 娘ドラ子に誘われ
下関まで 2泊旅行をした
母の ショートステイのお預けは
午後1時過ぎから
それから 駅に行って
新幹線に乗って
となったら
現地に着くのは もう夜
しかも 帰る日のお迎えは
午前11時
となると
それなりの2泊旅行を
楽しもうとすると
母には ショートステイに
4泊してもらわざるを得ない
それは
さすがに 酷だ
なので
隣駅に住む 仲の良い叔母に
お願いし
朝早く 我が家に来てもらって
ショートステイの お迎えが来るまでの
数時間
一緒に 過ごしてもらった
んだけど
その夜
旅先に
叔母からのLINEが きた
無事
姉(←母)を お迎えの車に乗せました
安心してください
ところで
姉(←母)は ずっと
ショートステイに 行きたくない
と言い続けて 泣いていました
私は その様子を見るのが
本当に辛かったです
◯ちゃん(←私)には悪いけど
今後 このお役目は
お引き受けできません
…
ガビ~ン
…
四面楚歌
先日 厚生省から
ひとの健康寿命の発表が あった
健康寿命とは
日常生活を 問題なく送れる
期間のこと
その 日本人女性の平均は
75歳
ということは
私には
外出や 旅行を 楽しめる期間は
あと10年も
残されていないことになる
アルバムの中で
海外含め 数々の観光名所で
写した写真の中で
人生を謳歌するように
微笑む母は
40代~70代
私は
今 60代後半
ということは
母と私の どちらが
ほんとうの 悪代官なのか?
母のことは 大好きだけど
大切に 思っているけれど
次に
気の合う友だちに
海外旅行に誘われたら
私は…
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