認知症の母に「デイホーム減らすわ」と問われた60代主婦の菩薩対応とは?【認知症母との介護生活#75】
60代主婦の日常を、4コママンガとエッセイにしてブログで配信をしている、ぱいなっぷりんさん。その中から、「認知症母との介護生活」を順に紹介していきます。
手伝う?いやいや絶対困ります
その日の 夕食後も
私は
椅子に座って
体は まったりしながらも
頭の中は フル回転させていた
これから 母を寝かせるまでに
課せられたミッションを
どのように 進めるか
先ずは
母に 食後の薬を飲ませて
食器を洗って
お風呂のスイッチを 入れてから
デイホームのノートを 見て
持ち物や提出書類の チェックをし
明日出すゴミを 回収して
そうそう
母のテーブルの下の 食べこぼしも
拭かないと
それから…
それから…
あれ…?
やること 他にもあったよね
なんだっけ?
まいったな
毎日のことなのに
何故 すぐ 思い出せないかな
私も 今や 前期高齢者
大分 頭の回転が
鈍ってきているんだから
そろそろ TO DO リスト 作って
壁に貼っといたほうがいいな
と 毎日 思って
毎日 忘れてしまう
そんな
自分への絶望を感じる までが
毎日のお約束
そんな時だった
母に
唐突に 聞かれた
ねえ 私がデイホームに行ってる間
あなた 何してるの?
遊んでるの?
これは…
素朴な疑問か?
それとも
皮肉で 言っているのか?
一瞬 返事に窮したけど
取り敢えず
頑張ってる 私
をアピールしてみた
(多少 盛ってみた)
それに対する
母のリアクションは
ちょっと 意外なものだった
あらあ…
と言って しばし絶句した後
口に手を当て
娘が そんな
大変な思いしているって
私 全然知らなかったわ…
申し訳なさそうな顔で
そう 言った
私は
母が 珍しく
私を気遣うような言葉を
言ったことに
ちょっと びっくり
ちょっと うれしかった
そして
話を 盛ってしまったことに
少し 後ろめたさを感じた
もっとも
その後に続いた 母の
私も手伝うから 何でも言って
という ドヒャンな言葉には
いや 何も手伝わないのが
一番の お手伝いだから
と 心の中で
しっかり ツッコんだ
…んだけど
母は その直後
更なるパワーワードを
ぶち込んできたのだった
デイホームに行く日を
減らしたっていいのよ
デイホームに行く日を
減らしたっていいのよ
デイホームに行く日を
減らしたっていいのよ
……………
あまりにも
自分の置かれた状況が
わかっていない お言葉
私は
思わず 口を開け 天を仰ぎ
白目を剥いた
さすが 認知症
に しても
母の言葉は
私には
到底 受け入れられるものでは
なかった
母と 穏やかに対峙し
母を好きでいる為には
今以上の負担は
絶対 無理
そんな
ストレートに言えば
相手を傷つける 私の感情を
母の気分を害さず
如何に うまく伝えるか
私は 白目のまま
錆びついた頭で 考え続けた
そして
私は 菩薩になった
満面の笑顔で
母に やさしく語りかけた
ううん
そこまでしなくても 大丈夫
それより 私
仕事で 家を開けることも多いから
デイホームに行ってもらったほうが
安心だし
何より
お母さんも さびしくないでしょ
満点に近い 回答だ
と思った
自分で自分を 褒めたくなった
伊達に 60余年 生きてない
最近の母は
独りが すっかり苦手になって
私の姿が見えないと
赤ちゃんのように 探し回る
菩薩のご宣託に
母は 素直に納得したようで
急に 無口になった
そして その時には
今まで話していたことも
自分が質問したことすら
既に 記憶から
消え去ってしまってたんだろう
おもむろに
眼の前の和菓子を 手に取り
鼻歌を歌いながら
食べ始めたのだった
日々
いろいろなことがあるけれど
母に残された
そう長くはない 時間
二人で ちょっと ちょっと
気を遣いながら
お互い 気分良く過ごせたら
そんなことを思った
▼次回はこちら▼
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