「え、味が濃く感じる…!?」減塩生活を支える、魔法のスプーン&カップ「エレキソルト」とは?
高血圧や慢性腎臓病などの病気で減塩を心がけている人にとって、少ない塩分でいかにおいしく食事できるかは大きな課題。そこで、「我慢するのではなく、食事の楽しさを保ったまま減塩できるように」と開発されたのが、減塩サポート食器「エレキソルト」です。
開発者でもあり、発売元のキリンで同事業の事業責任者を務める佐藤愛さんに、しくみや機能について詳しく伺いました。
食品が本来持っている塩味とうま味を電流の力で引き出し(※)、舌に伝える
-一見、普通のスプーンとカップですが、これが電気機器…?
はい、減塩サポートのための食器型電気機器「エレキソルト」です。電気の力を使い、薄味でつくった減塩食の味わいを増強する (※)技術を搭載しています。スプーンタイプが先に発売され、つい最近カップも新商品として加わりました。
味わいを増強するしくみはさまざまあるのですが、その中で最も特徴的なのは電流をコントロールしていることです。スプーンやカップには電極部分があり、そこから電流が食品を介して口に流れていきます。電流が流れることによって、口の中では塩味のもとになるナトリウムイオンが舌のほうに引き寄せられる。これで塩味をより強く感じられるのです。臨床実験では、塩味だけでなくうま味も引き出されることが確認されています。 (※)
※体感には個人差があります。
また、料理によっても感じ方が異なる場合があります。
-電流の力で塩味やうま味を引き出して、味が濃く感じられるというわけですね!
塩分の摂取制限をされている方は、食事=我慢という印象になりがち。食事は楽しいもののはずなのに、食べたいのに食べられないのは本当につらいですよね。
私はもともと食品素材の開発をしていて、そのなかで減塩食に取り組んでいる方から話を聞いたり、減塩食に途中脱落する患者さんがいると病院の先生から聞いたりしてきました。私自身も実際に3ヵ月間減塩生活に挑戦してみたのですが、本当につらかった! 重要だと頭では理解していても、なかなか続けられない大変さがあると実感しましたね。
そこから新しい技術でこの食の問題を解決できないかと模索し始め、大学の研究室と共同研究を進めてエレキソルトが生まれました。構想から発売までは6年ほどかかっています。
食卓になじむシンプルなデザイン。食洗機もOK!
-エレキソルトを実際に手にとってみましたが、想像以上に軽くて驚きました。
日常のシーンで使っていただくことを意識してつくったので、使いやすさや軽さにはこだわっています。デザインも、食卓になじむようシンプルにしました。使用するのは、コンビニでも購入できるリチウムコイン電池。1日3回の使用で約20日使用できます。
スプーンの持ち手やカップの底蓋を外せば、スプーンの先端部分やカップ本体は食洗機で洗えます。毎日使っていただくために、お手入れはなるべく負担のない設計にしたかったのです。ただしスプーンの持ち手部分やカップの底蓋部分は水洗いできないため、アルコールや中性洗剤を含ませた布を固く絞って拭いてください。
-スプーンとカップがありますが、使い方は異なるのでしょうか?
塩味やうま味を感じるしくみはどちらも同じ。スプーンは、いつものお箸やれんげがわりに使います。カップはより幅広いメニューで活用可能。とくにスープや味噌汁、麺類で効果を発揮するのではと考えています。スプーンとカップを同時に使うのではなく、食事シーンで使い分けていただくようなイメージです。
汁物は、減塩対策で真っ先に制限がかかってしまうメニュー。味噌汁やラーメンなどがとくにそうですね。お湯や水で味を薄める、汁を減らして具沢山にするなどで対策することが多いですが、「やっぱり食べたい」というお声がとても多い。でも、エレキソルトを使えば塩分を減らしたり味を薄めたりしてもおいしく感じられます。イベントなどで集計したアンケートでは、約90%以上の方が「塩味が増強された」と回答してくださっています。
-電流を流すというとピリピリしそうですが、大丈夫なのでしょうか?
エレキソルトのしくみは、EMSや美顔器と同じ。体の中に電流を流しますが、かなり微弱なのでピリピリすることはほぼないと思います。でも、電気の感じ方は体質によってさまざま。個人差がとても大きいので、違和感や雑味を感じるという方がいらっしゃるのも事実です。これも美顔器と同じで、電流を強くしても何も感じない方もいれば、弱モードでも刺激が強いと感じる方もいますよね。エレキソルトお客様センターでは、効果が感じられない、体質に合わないという方には購入後の返品にも対応しています。
後編では、エレキソルトを使用する際のポイントや注意点などについて詳しくお伺いします。
佐藤愛さん
キリンホールディングス
ヘルスサイエンス事業部 エレキソルト事業責任者
1985年広島県生まれ。2010年キリンホールディングスに入社し、研究開発および企画業務に従事。2019年、明治大学 宮下芳明研究室と共同でエレキソルトの前身となる技術を開発し、社内の新規事業コンテストに応募してエレキソルトプロジェクトを発足。現在も改良や新規商品の開発を行っている。
撮影/柴田和宣(主婦の友社) 取材・文/佐藤望美
