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【ばけばけ】笑えない!実母(北川景子)の物乞いにはさすがに大きく心を突き動かされたトキ(髙石あかり)[写真多数]

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田幸和歌子

【ばけばけ】笑えない!実母(北川景子)の物乞いにはさすがに大きく心を突き動かされたトキ(髙石あかり)[写真多数]

「ばけばけ」第28回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。『怪談』でおなじみ小泉八雲と、その妻 小泉節セツをモデルとする物語。「ばけばけ」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

▼前回はこちら▼

>>【ばけばけ】「それでも困ったら、私がいます」優しく語りかける錦織(吉沢亮)に、異文化交流の予感[写真多数]

〝ジゴク〟を笑いに変える構成は見事

日本に伝承される怪談をもとにした作品を発表したラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、その妻・セツをヒロインとした髙石あかり主演のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第6週「ドコ、モ、ジゴク。」が放送された。

サブタイトルにある〝ジゴク〟とは、何を意味するのか。

前週、松江に英語教師としてやってきたヘブン(トミー・バストウ)。第6週のストーリーの軸のひとつとして、その人物像とヘブン自身の混乱やとまどいが描かれた。〝ジゴク〟とは、慣れない異国の地、日本のあまりにも異なる文化に感じるものだった。前週も、迎える側の松江の人々にとってはある種畏怖すべき存在であるものの、当の本人は緊張に包まれており、異人さんも同じひとりの人間であることが描かれたのが印象的だった。

中学校の初授業も、廊下で待機中にぐるぐるその場を回っているなどその緊張ぶりが見てとれるが、それを覆い隠し、先手を打つようにはじめの挨拶で宣言した。
「I love Japanese language(私は日本語が大好きだ)」

しかし、授業では日本語は使わない。私の言葉を全て聞き取り理解してほしいと。この挨拶は生徒たちに好評をもって受け入れられ、教師としては上々のスタートを切ったようだ。

異国の文化や習慣など、ヘブンの異文化ギャップは苛立ちをつのらせる。滞在先の花田旅館でヘブンに気さくに接する女中・ウメ(野内まる)の目の様子を心配し、主人の平太(生瀬勝久)に医者に連れていくようにお願いしていたのにまだ連れて行ってもらっていなかったことに激昂し、平太に詰め寄る。そして、
「ジゴク! ジゴク!」
と連呼する。

これは自身も左目を失明しただけに、心からの叫びであろう。そんなヘブンのヒューマニズムと、あ、そうだった、落ち着いたら連れて行こうと思っちょったなど呑気な雰囲気の花田旅館サイドのコントラストが際立つ場面だ。

【ばけばけ】笑えない!実母(北川景子)の物乞いにはさすがに大きく心を突き動かされたトキ(髙石あかり)[写真多数](画像2)

「ばけばけ」第26回より(C)NHK

【ばけばけ】笑えない!実母(北川景子)の物乞いにはさすがに大きく心を突き動かされたトキ(髙石あかり)[写真多数](画像3)

「ばけばけ」第26回より(C)NHK

この呑気な雰囲気は、ヒロインの家族、松野家に漂う空気として序盤から表現されていた。没落した武家として、そして維新後の商売に大失敗し、今なお返せていない巨額の借金を抱える。トキも小学校を中退し、一度は結婚するも失敗といった波乱に満ちた人生は、どうみても〝ジゴク〟ではあるが、そこはどこか呑気に笑いとして処理されていく。

しかしその笑いは、つらいときでも笑っていればいいというような、能天気さでもない空気である。しじみ売りで生計の足しとするも、それはかなりの薄給であり、それでもその環境を自虐的に笑って過ごす。そこが本作のイメージの大きな要素であろう。ときどき蛇と蛙として現れる阿佐ヶ谷姉妹の語りでツッコミを入れながら、その〝ジゴク〟のような環境を笑いに変えていく構成は見事なものだ。

【ばけばけ】笑えない!実母(北川景子)の物乞いにはさすがに大きく心を突き動かされたトキ(髙石あかり)[写真多数](画像4)

「ばけばけ」第27回より(C)NHK

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