【ばけばけ】笑えない!実母(北川景子)の物乞いにはさすがに大きく心を突き動かされたトキ(髙石あかり)[写真多数]
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田幸和歌子
物乞いをしながら決して頭を下げないのも
前述したように、〝ジゴク〟を呑気に過ごす松野家の雰囲気があるからこそ、今週、さらなるもうひとつの〝ジゴク〟と並行して描かれた、雨清水家の〝ジゴク〟が胸をえぐるように突き刺さる。
あるとき、トキは、タエ(北川景子)が路上に座り物乞いをする姿を目撃してしまう。タエはトキの実母である。雨清水家は、本作序盤ではしっかりした考えを持ち、事業も順調、松野家と対照的な存在として描かれてきた。しかし、夫の傳(堤真一)が亡くなり、織物工場も倒産してしまう。残されたタエは何もできない「お姫様」。
三男の三之丞(板垣李光人)はといえば、雇ってくださいと訪れた牛乳屋に「人を使うことができる」と主張し、社長にしてくれとまさかのお願いをし、雨清水家の人間だと家柄を主張し叩き出されてしまうというあまりにも世間知らずのお坊ちゃんぶりには、いささかひいてしまうほどではあるが、そのように育てられ、いつまでも「家」を背負い続けるという〝ジゴク〟。
タエが物乞いをしながらも凛と背中を伸ばし決して頭を下げないのも雨清水家の誇りがそこにいつまでもあるからでしかない。
それぞれの〝ジゴク〟。こう考えると、ヘブンが口にする〝ジゴク〟は単なるわがままのように見えてしまいそうだ。「おばさまを見ました」と、偶然会った三之丞にトキが告げるシーンは、これまでベースとしてさんざん敷き詰められてきた苦労や苦難もどこか「笑い」を入れてきた空気があったからこそいっそう効果的なのではないだろうか。その狙いはうますぎるほどだ。
今週ラスト。これまで「笑い」でなんとかやりすごしてきたトキも、実の母とその家族が直面する〝ジゴク〟には大きく心を突き動かされた。トキは、ヘブンの女中となることを決心する。
この〝ジゴク〟は、オープニングのようなふたりの雰囲気にどのような経緯を経て変化していくのか。〝ジゴク〟はどうやって〝ヘブン(テンゴク)〟へと転じていくのか。ますます目が離せない。
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