【ばけばけ】笑えない!実母(北川景子)の物乞いにはさすがに大きく心を突き動かされたトキ(髙石あかり)[写真多数]
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田幸和歌子
月給20円。破格すぎる待遇だ
ヘブンは、松江での生活のさまざまな世話をやく錦織(吉沢亮)を振りまわしまくる。到着早々、用意された高級旅館から庶民的な花田旅館に滞在先を変更させたかと思えば、そこで「ジゴク」と言い、旅館選びを「ヘタ!」と吐き捨てる。さらには身の回りの世話をお願いする「女中」探しも頼まれてしまう。
ここでいう異人の「女中」は、少しニュアンスが異なってくる。異人の女中は「ラシャメン(異人の妾)」と呼ばれる、ある種卑しい存在とされ、待遇はいいがまともな女性がやるものではない位置付けだ。これもまた、雇われる側の〝ジゴク〟である。そんな〝ジゴク〟に遊女のなみ(さとうほなみ)が、家族のためにと意を決して名乗りをあげるが、
「いいトモダチでいましょう。ごめんなさい……」
と丁重に断られてしまう。
ヘブンの希望は、「士族の娘」であり、百姓の娘のなみは条件に合わなかったのだ。進歩的であろう異国からの来訪者にも、サムライ憧れ、出自のバイアスがあると知るショッキングな場面だが、そこで声をかけられたのが、トキだった。
ある日、トキのもとに神妙なおももちの錦織が現れる。
「ヘブン先生の女中になってほしい」
月給20円。参考までに女中のウメの給金は月90銭、その20数倍と思えば破格すぎる待遇だ。しかしトキはその申し出を断る。家族のためにもという錦織の説得に、「馬鹿にせんでごしなさい!」と一喝するさまは、一人の人間としての尊厳とともに、武士の娘のプライドがトキにも残っていたようにも感じられた。
ほぼすべての視聴者が知っているように、ゆくゆくはトキとヘブンは結ばれるはずである。この初めからある溝がどう埋まっていくのか、オープニングの仲睦まじい様子が毎回流れるたびに気になるところだ。
