選ぶ基準は「10年後も使いたいかどうか」コンパクトな住まいに対応した暮らし【60代エッセイスト 広瀬裕子さん】
日々を明るく照らしてくれる小さな楽しみや、心を潤すための暮らしの工夫は、幸せを感じさせてくれます。そんな暮らしを営み、わたしらしく、今を生きる女性を紹介する『60代からの小さくて明るい暮らし』(主婦の友社)から、エッセイスト 広瀬裕子さんをご紹介します。2回に分けてお届けする後編。好評につきリバイバル配信です。
PROFILE
エッセイスト・設計事務所共同代表
広瀬裕子さん
東京都在住。ひとり暮らし
1965年、東京で生まれ育ち、葉山や鎌倉、香川を経て、2023年から東京在住。衣食住をテーマに執筆を続ける一方、設計事務所で空間デザインディレクターとしても活動。近著は『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)。
思考も暮らしも違和感を解消してフラットな心地よさをつくりたい
ここのところ広瀬さんの中で優先度が高くなっている“課題”は、“違和感をなくすこと”。
「10代の頃から、雑多な色やデザインのものを使うたび心がざわつくことがありました。私が気にしすぎなのかと思っていましたが、年齢を重ねるにつれ、違和感のあるものをなくすと空間も心も風通しがよくなることに気づいたんです。今回の引っ越しでも、コンパクトな住まいに合わせてものを厳選しました。選ぶ基準は“10年後も使い続けたいか”。というのも父の遺品整理をしていると、着なくなった衣類や使わずじまいの新品が多かったからなんです」
今後は“違和感の解消”を基準に不要なものを削ぎ落とし、自分らしさの純度を高める時期なのかもしれません。近年、ヘアカラーをやめたのもそのひとつ。
「50代後半から、当時の自分と髪色にパズルがはまっていないような違和感があって。短くしたり、ブリーチしたりしてみてもしっくりこなかったので、髪を染めるのをやめてみました」
また、建築家の友人に誘われて50歳から始めた空間設計の仕事でも、違和感を解消することの大切さを実感しているそう。
「ホテルやお店などの空間ディレクションでは、居心地のよさに焦点を当てて考えるのですが、人によって好みは違うので、何かを足すのは難しい。でも不快なものを減らすことで生まれる心地よさは、多くの人に共通するんです」
このフラットな心地よさを他者にシェアしていくことが、広瀬さんの今後のテーマです。
「父の介護経験では気づきがたくさんありました。椅子ひとつとっても介護施設や病院では安全性が最優先。同じように一般のお宅でも手すりや水回りの準備が必要な場合は多いはず。同世代の方々に向けて、安全性を高めつつ、違和感なく日常生活ができる空間をつくれたらと考えています」
