ベストセラー「怖い絵」シリーズの作者【中野京子さん】。新刊『希望の名画』への思い、2026年におすすめの絵画展情報も!
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ゆうゆう編集部
「希望」をキーワードに選んだ30枚の名画に潜む画家や描かれた人物のドラマチックな人生をひもとく『希望の名画』の著者・中野京子さんにお話を伺いました。
細部を観賞することで絵画がぐんと面白く
独自の視点から、さまざまな時代、国、画家の手になる名画を読み解くエッセイで、多くの読者に支持されている中野京子さん。なかでも「恐怖」をキーワードに名画をセレクトした「怖い絵」シリーズは、大ベストセラーとなり、「怖い絵」をベースにした展覧会「怖い絵展」は大きな反響を呼んだ。
新作『希望の名画』は「希望」に焦点をあてて選んだ名画30点に、中野さんならではの解説をつけた一冊。全8章の見出しは「愛」「期待」「救世主」「信仰」「王族の幸福」「絶望の先に」「理想郷」「人生の開拓者」。ゴッホ、ボッティチェリ、ゴヤ、クラーナハ、クラムスコイなど、国や時代もさまざまな画家たちの作品が取り上げられている。
それぞれの解説には美術的な知識のみならず、絵にまつわる歴史、画家や描かれた人の人間ドラマがちりばめられていて、文章を読んでは絵を見直し、絵を観ては、また文章を読み、とじっくり楽しめる一冊だ。
画家が渾身の力をふりしぼって描いた絵。ぜひ細部まで観て、楽しんでください
そして、本作で注目したいのが絵の見せ方。絵画の紹介に先立ち、作品のごく一部を切り取って拡大したものが提示されているのだ。
たとえば表紙のウォーターハウス(イギリスの画家)の作品「パンドラ」では、「開けてはいけない」と夫に言われた箱を、そっと開けようとしている黒髪の美女、パンドラの横顔部分が切り取られている。白くなめらかな肌、赤い唇、箱をのぞき込む目元。箱の中からありとあらゆる災厄が飛び出す寸前の、パンドラの表情がハッとするほど美しく、なまめかしい。
「美しいですよね。この本は月刊誌『文藝春秋』の連載を抜粋してまとめたものですが、連載の開始前、編集者から3ページの展開と聞き、絵は見開きの2ページに大きく載せたい、と思ったんです。それで最初の1ページで絵のごく一部分を見せて、『この絵はどんな絵の一部でしょう』とクイズっぽくしたら面白くなるのでは、と考えました」
名画から切り取られているのは、つぶらな瞳の幼子(おさなご) 、手に握られた一輪のバラ、こめかみにつけぼくろのある老嬢の顔、ちょこんと座った老妖精などなど。「この絵にこんな部分があったの?」と、驚かされるものも多い。
「絵を観るとき、多くの人は主題として描かれたものを観るだけで、細部まで観る人は少ないのでは。でも絵画も小説と同じ。特にミステリー小説家がたくさんの伏線を張っているように、画家も細部にさまざまなことを描き込んでいます。それを知れば、一枚の絵をより楽しむことができると思います。ぜひ細部まで観ていただきたいですね」
中野さんは「絵は、その裏にある物語や時代背景、社会状況、文化などを知ると、より深く理解でき、楽しむことができる」と言う。中野さんの数多くの著書は、どれも、わかりやすい指南書であり、絵画を観賞する新しい目を授けてくれる。
