南仏の小さな村で現役、69歳アンティーク商が語る「人間に本当に必要なものは、実はとても少ない」
「好きだから働く」69歳の今も現役
その後、離婚して、一人で子育てをした期間も長かったそうです。
シングルでの子育て、楽ではなかった時期もあったでしょう。それでも彼女は、穏やかな口調でこう話します。
「張り詰めた空気の中で暮らし続けるより、別れを選ぶことが正しいときもある。あの選択が私をより強くしてくれました。離婚を経て自由を手に入れたら、もう何も怖くないと感じたの」
その経験が、彼女の人生哲学の土台をつくりました。
「人間が本当に必要なものは、実はとても少ない。好きな仕事、家族を守る家、必要なものをまかなえる収入——それで十分です。自分が心地よく満たされているなら、隣の人より多くを持つ必要はどこにもない」
持つことより、存在すること。競うことより、満たされること。その言葉は、飾りのない真実として、静かに胸に落ちてきます。
娘さんたちも成人し、それぞれの人生を歩むように。子育ても落ち着いた1990年代、40代後半で、ついに正式に骨董商として歩み始めます。回り道をしたものの、16歳のころインテリアデコレーションの夢を抱き、胸の中でくすぶっていたアンティークへの情熱が、また勢いよく燃え始めました。
「近くの街で暮らす年老いた両親を支えたいと思って家を探していた時に、偶然この村で出会ったのが、今の家なんです。12〜14世紀ころの古い建物で、傷んではいましたが、家の個性を感じて、一目惚れでした」
ここで自分のお店を開くんだ——と、この家に背中を押されるように決意したクリスティーヌさん。後からここが中世の商人の家だったと知り「これは運命だったのねと思いました」。
アンティークショップを開いて20年近く経ちます。69歳の今も、彼女は働き続けます。「なぜ?」と問えば、答えはシンプルです。
「この仕事が好きだから。好きなことへの情熱が健康の秘訣でもありそうね」
回り道も、一目惚れも、すべてが必然だったかのような人生。その冒険はまだ続いています。
次回は、クリスティーヌさんが20年かけて育ててきた、暮らしと仕事がとけあう場所をご紹介します。
撮影/安田佑輔 @mimizu_france @mimizu_brocante
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