【ばけばけ】錦織(吉沢亮)がこの世を去った夜…映画『国宝』は日本アカデミー賞10部門受賞という“出来過ぎた偶然”
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田幸和歌子
役作りのために1カ月で約13キロの減量
ヘブンとトキの戸籍については、ヘブンの国籍以外にもさまざまな問題があった。戸籍上、元夫の銀二郎(寛一郎)の籍が残っていたのである。そのため、ヘブンとトキはそのまま入籍できない。さてどうするかと思えば、それは意外な方法で解決に動いていった。それは、トキが松野家から生みの親であるタエ(北川景子)のもと、つまり雨清水家に戸籍を移すというものであった(〝雨清水トキ〟という名前を「丑三つ時」となぞらえて笑うという箸休め的なくだりもあるのが本作らしさである)。
久しぶりに再会した錦織は、病に冒され変わり果てた姿となっていた。この作品序盤と比べてもそのメイクなどだけではない明らかな錦織のやつれぶりは衝撃だった。明かされた話では、役作りのために1カ月で約13キロの減量を遂げたという。その役作りのために、吉沢出演のパートは1カ月にわたり撮影を休止するという手段がとられたそうだ。
ヘブンに頭を下げられた錦織だが、その申し出に反対する。日本人となってしまうことで、ヘブンがこの先海外での滞在記などの執筆ができなくなることもある。それはもっともなことだ。実際、あれだけ心を動かされてきた松江の空気に慣れすぎてしまったのか何も感じなくなっていた。
残りの生命の炎を燃やしている状態ということもあるだろうが、それはこれまでさんざんヘブンに振り回され、その都度自分の気持ちを飲み込んできた姿とは異なる強い思いが感じられるものであった。それもまた、錦織の〝愛〟ゆえのもの、おそらく残された時間としては最後のやりとりになる予感もあっただろうからこその、本気の気持ちをぶつける思いがあったのだろう。
錦織は、そのように自らの最後の炎を燃やし、ヘブンの執筆意欲をふたたびかきたてるというリテラシーパートナーとしての役割を最後までつとめあげる。そして、静かにこの世を去った。
錦織がこの世を去った夜、吉沢亮主演の映画『国宝』が日本アカデミー賞で10部門を獲得したというのも、あまりにも良くできた偶然である。
さて。晴れて日本人としての国籍を取得したヘブンの日本名が、勘右衛門 (小日向文世界)によって命名された。その名は、「雨清水八雲」。皆の知る〝八雲〟の名がついに登場した。
次週第24週のサブタイトルは、「カイダン、カク、シマス。」。八雲の名前とともに、残り2週にしてついに『怪談』の執筆に取り掛かりそうである。ラストスパート、ヘブンとトキの物語はどう折り畳まれていくか。楽しみに待ちたい。
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