定年後の父が急に“過激な情報”に傾いたのはなぜ?背景にあるネットの仕組みを【池上彰が解説】
デマを見抜けない中高年
フェイクニュースを見抜けない人は、中高年層に多いという状況があります。
国際大学の山口真一准教授らの調査(23年)「偽・誤情報、陰謀論の実態と求められる対策」で、政治関連のフェイクニュースを見抜けた人は、20代21.4%、30代19.2%、40代16.7%に対し、50代は6.5%、60代は8.5%と、50~60代が最も少なかったという結果でした。
定年退職した父親が、急激にネット右翼(ネトウヨ)になったという話は、あちこちで聞きます。中高年世代には、子どもたちのように「学校でメディアリテラシーを身につける」という機会がありません。そのため、デジタル機器やインターネットとどう付き合えばいいのかという教育を受けないまま、定年退職して暇になり、パソコンでいろいろネットサーフィンを始めたところ、すっかりネトウヨとなってしまうのです。
私も大学時代の同級生と、数年に1回は同窓会をしていますが、あれよあれよという間にネトウヨになってしまった人がいます。
彼らはAIがアルゴリズムによって動いていることなども知らないため、一度何かを検索したら、その後同じような話ばかり出てくる理由がわかりません。そして「こういう意見ばかり表示されるということは、世の中のみんなもこういうふうに思っているんだ」と思い込みます。これは偏った情報だけに包まれる「フィルターバブル」現象です。
またSNSで、自分が発信した意見と似た意見ばかりが表示され、反対意見は表示されず、偏った意見や思想が増幅していく「エコーチェンバー」現象もあります。
こうした現象を知らない人が、ネトウヨなどにはまってしまうというわけです。
新聞やテレビなどのオールドメディアであれば、それぞれの意見を並列するため、「世の中にはいろいろな考え方があるんだな」と自然に伝わるのですが……。
実際、あるとき韓流ドラマ好きの女性と話をしていると、「LINE NEWSをよく見ているんだけど、最近はみんなとにかく韓流ドラマが大好きなのね、韓流ドラマの話題ばかり送られてくるわ」と言うので、苦笑しました。「あなたが韓流ドラマの話題ばかり見ているから、アルゴリズムでそうなっただけだよ」と教えると、「なるほど、それで疑問が解けた。世の中にはこんなに韓流ドラマを好きな人がいるのかと思い込んでいた」と言っていました。
この辺の事情はむしろ若い人のほうが理解していて、中高年とはずいぶん違います。
思い込んでしまった中高年に、子どもが「それは間違っている」などと頭ごなしに言うと、ケンカになることもあります。「インターネットはこういう仕組みになっているんだよ」と優しく説明をしてあげる、あるいは第三者に教えてもらえる機会を用意する、といったやり方で教えてあげてほしいと思います。
先述の山口准教授らの調査では、フェイクニュースを信じている人ほどそれを拡散し、またメディアリテラシーや情報リテラシーが低い人もフェイクニュースを拡散することが明らかになっています。
リテラシーの低い人は、ネットで出てくる話題をまず信じてしまい、ある種の善意で「これは拡散しなければいけない」と思って拡散してしまうわけです。
リテラシーの高い人は、「びっくりする話だけれど、これは本当かな。確認が取れるまで自分は拡散しないでおこう」という判断ができます。
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