なぜプーチンに逮捕状が出せたのか?日本人裁判官・赤根智子とICC(国際刑事裁判所)を【池上彰が解説】
「法律で裁けなければ、何をしても許されるのか?」そんな疑問を抱かせるニュースが増えています。政治とカネの問題やAIによるフェイクニュースなど、法の網をすり抜ける現実に、私たちはどう向き合うべきなのでしょうか。池上彰氏の最新刊『法で裁けない正義の行方』(主婦の友社刊)から、一部を抜粋してお届けします。第1回は、プーチンに逮捕状を出した日本人女性裁判官に迫ります。
プーチンに逮捕状を出した日本人女性裁判官
ロシアによるウクライナ侵攻に向き合い、ロシアのプーチン大統領らに逮捕状を出した、オランダの国際刑事裁判所(ICC)。
この逮捕状を23年3月に発布したのが、当時ICCで裁判官を務めていた日本人女性の赤根智子さんです。これにより、赤根さんは同年7月、ロシアによる指名手配リストに載りました。
24年3月からは日本人で初めて、ICCの所長に就任しています。
24年11月にはICCが、パレスチナへの非人道的な攻撃をしているイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出しました。
イスラエルを支持するアメリカのトランプ大統領はこれに対抗し、25年2月にICCへの制裁を可能にする大統領令に署名し、ICCを潰そうとしています。
赤根さんは所長として、各国にICCの危機を訴え、支援を求めています。
赤根さんは、日本で長年検察官を務めていました。非常に能力が高かったために、ICCの裁判官に誘われたのです。
ICCは、国際条約である「国際刑事裁判所に関するローマ規程」に基づき、戦争犯罪や人道に対する罪、ジェノサイド、侵略犯罪などを行った個人を、訴追・処罰している裁判所です。
現在、日本をはじめ世界125カ国・地域が締約国となっていますが、アメリカ、中国、ロシアなどの大国は、締約国になっていません。
ロシアから指名手配をされ、脅迫なども受けていたとき、私も赤根さんにリモートでインタビューしました。
彼女は「どんなことがあっても自分の職務に忠実に、中立公正な裁判を求める立場で、職務を全うする」と毅然(きぜん)としていました。
「命の危険を感じることはありませんか」と尋ねたところ、彼女は「裁判官は、1人いなくなっても代わりがいる」と言ったのです。その腹の据わった堂々とした姿勢には感服しました。
赤根さんのような、正義へのブレない志を持つ人たちが、司法の正義を守ってくれているのです。
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法で裁けない正義の行方
池上彰著
主婦の友社刊
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