朝ドラ【風、薫る】直美(上坂樹里)が知った母の気持ち、そして吾郎(甲斐翔真)が見たかった赤ちゃん
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田幸和歌子
「おかえり」 とりんが出迎える
やがて、日清戦争は終結する。それを報じる記事に、吾郎さんが帰ってくると喜ぶ直美だったは、結果としていえば、吾郎は帰らぬ人となる。
吾郎の最期を看取ったのは、広島の陸軍病院につとめる多江(生田絵梨花)だった。多江は、吾郎の最期の姿を告げる。負傷に加え、脚気にもかかっていたという。そして、直美にご飯をもう作ってあげられないこと、赤ちゃんの顔を見たかったと残念がりながら息を引き取ったという。
多江が遺品として持ってきたのは、吾郎の軍服の第2ボタンだった。何度も取れては直美が文句を言いながらも縫い付けてきた第2ボタンは、やはり取れていた。多江が、吾郎のボタンが何度も取れた意味を明かす。吾郎は文句を言いながらも慣れない手つきで直美が真剣に手を動かす姿を見るのが大好きだった。だから、ときにはわざと引っ張って取っていたこともあったという。第2ボタンは物言わぬ吾郎からの愛情表現だった。
「それつけてきてあげて」
りんに促され、直美は最後に軍服のボタンの縫い付けをする。そして、思い切り泣いた。吾郎との死別は戦争によるものではあるが、それは戦争の悲惨さ、そして賛否そのものを問うものでなく、二人、もしくは明を含めた三人の運命でしかないのかもしれない。世界各地での紛争は続き、昨年は戦後80年という節目を迎えた。作品内での日清戦争は、100年以上も前の出来事ではある。そんななかで描かれる、ごくごく普通の日常の幸せを求めた夫婦の物語として描かれたからこそ、そのやるせなさがじわじわと染み込んでくるような気もした。
「ただいま」
その言葉とともに、直美はりんの実家、一ノ瀬家に帰る。
「おかえり」
とりんが出迎える。明を迎え、新たな日常、新たな未来が始まる。
吾郎はもうこの世にはいない。しかし、吾郎はいろいろな幸せを直美にもたらせてくれた。吾郎と直美、二人の思いが込められた「明」という名前の赤ちゃんは、それこそ「明るい未来」を運んできてくれる存在になっていくだろう。
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