朝ドラ「ブラッサム」父・清治の「死にとうない」ににじむ孤独。渡部篤郎の名演が胸に刺さる
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田幸和歌子
書きたいという衝動が、珠には抑えきれない
さて、珠が自由に羽ばたくにあたっての大きな障壁となっているのが父親の存在である。そんな父・清治が病に冒されてしまう。床に伏せりやつれたその自身の姿を見て、清治はこうつぶやく。
「みすぼらしい……」
清治は実家の酒造を継がないものの、その援助によって「放蕩無頼」と呼ばれながらも自身のスタイルを貫き続けた。働かないもののプライドはとても高い。「みすぼらしい」は。病によってそのプライドが崩壊していくことを自覚したことから発せられた清治の本音であり、やがて迫りくる「死」を実感したことによる恐怖によって発せられた言葉であろう。
家庭では威厳というよりもただただ暴君的にふるまう清治は、実は自分が何も持たない人間であることを、ある種の虚勢のようなものを張ることで蓋をし続けてきたような部分があったのではないだろうか。病がその蓋を外してしまい、中に封じこめてきたものが一気に溢れかえってしまった。なかばパニック状態に陥った清治は往来で自暴自棄に刃物を振り回し暴れる。そして、こう何度もつぶやいた。
「死にとうない……」
これが本心であろう。清治の人間としての虚しさ、弱さ、そして実は孤独な人生であったことが溢れかえる渡部篤郎の名演がぐっと惹きつける。
ほどなくして、清治はこの世を去った。珠が文学の世界に耽溺するようになったのは、父が罰として蔵に閉じ込めたことでそこにあった書物に触れたことがひとつのきっかけである。そういう意味では清治の存在は、のちの大作家をつくりあげた要素のひとつともいえる。しかしそれ以前に、ずっと自由を縛り付ける存在であった。清治の死は、そんな珠を結果的に解放することとなった。それは第1週で広い空へと羽ばたいていった清治が可愛がっていたカナリアのごとく。清治もまた解放されたのかもしれないが。
解放された珠は、ふたたび『黎明』の発行を提案する。また没収され注意されるどころか下手したら退学処分のリスクすらある。しかしそれでも書きたいという衝動は、解放された珠には抑えきれない。彼女たちはそんな覚悟のもと、決意表明のために記念写真を撮った。そのときの格好も思い思いのものであるところもまた、珠たちが求める女性の自由の表現手段のひとつである。
清治という呪縛から解放された珠は自由をどう発信していこうとするのか。ワクワクしながら次週を待ちたい。
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