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田幸和歌子の「今日も朝ドラ!」

朝ドラ【舞いあがれ!】ぶつかり合う兄妹のリアリティがまるでドキュメンタリー。舞ちゃんの選択と覚悟を応援したい

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田幸和歌子

しかし、もともと「後方確認」する慎重な舞にとって、親の築いてきた世界は自分が担えると思えるほど甘くない。親を尊敬しているからこそ、自分から前に出られず、「自分にできること」を懸命に探す。それが、ネジの箱詰めやデータ入力、資料の整理……十分ではないか。

そして、舞に「あんなちっちゃい工場のためにパイロットやめるとか、アホなんか?」と言った悠人もまた、浩太が「あんなちっちゃい工場」を守り続けるのがどれだけ大変だったかを知っている。だからこそ、「自分にできること」を追求し、努力してきた結果、東大を出て投資家として成功した今があるわけだし、だからと言って親の工場を門外漢の自分がどうにかできるなどと簡単に考えてはいない。ぶつかり合っている兄妹のどちらも、親の仕事への尊敬の思いが根底にはあるはずだ。

そしてそれは、いったん工場をたたむと言ったり、それを翻意したりするめぐみの弱さにも共通している。浩太が新事業スタートを決めて新しい工場を建てるとき、3億という金額を聞いて、もっと強く反対していたら。従業員のリストラをもっと強く勧めていたら。「浩太を支える人生」を選択する前は、優秀で「何でもできた子」だっためぐみが経理や事務などをしつつも、経営に口出ししてこなかったのは、それが尊敬する「浩太の築いた世界」だったからだろう。めぐみも悠人も舞も、浩太の世界を尊重するからこそ踏み込まなかったことが、こうして突然「我が事」となり、重責がのしかかる。

しかし、こうした他者の領域を尊重するがゆえの無責任が、突然「我が事」になるケースは、会社経営のみならず、家庭の中の役割分担でもしばしばあるのではないか。

そして、まだ覚悟の足りないめぐみは、大人と子どもの間くらいの舞を、従業員の退職勧奨の場に同席させる。社会人経験のない舞が、リストラする社員の再就職先を探すというのも無茶苦茶だが、こうして舞は航空会社の内定を辞退し、めぐみと共にIWAKURAを建て直す決心をする。本人の努力ではどうにもならない、不可抗力の時代の波に飲まれ、出口の見えない状況を舞は、めぐみは、どう進むのか。

一つの正解だったはずの「航空会社への就職」を辞めた舞の選択を、覚悟を、応援したい。

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