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【らんまん】綾(佐久間由依)に思いを伝え、最も大変で唯一無二の仕事を選ぶ竹雄(志尊淳)。最高の形でバトンは東京編へ

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田幸和歌子

【らんまん】綾(佐久間由依)に思いを伝え、最も大変で唯一無二の仕事を選ぶ竹雄(志尊淳)。最高の形でバトンは東京編へ

『らんまん』第25回より(C)NHK

朝ドラを見るのが1日の楽しみの始まりとなっている人、多いですよね。数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。より深く、朝ドラの世界へ!

長田育恵作・神木隆之介主演のNHK連続テレビ小説『らんまん』の第5週「キツネノカミソリ」が放送された。本作は、明治の世を天真らんまんに駆け抜けた高知出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにしたオリジナルストーリー。

朝ドラでは早い作品では3週目、多くは5週目くらいにやって来ることが多い小さな違和感や失望。しかし、本作では開始から1カ月面白いままで、5週目でそれを更新して来た。SNSでは、作品を観ないうちから「反省会」タグを作り、悪口を言う気満々で構える層を小気味よく蹴散らす快進撃が続き、あまりの出来の良さに「怖い」という感想が散見される事態にもなっている。しかし、蹴散らされる側もこうした裏切りなら大歓迎だろう。

槙野万太郎(神木隆之介)は植物学の研究に生きることを決め、綾(佐久間由衣)はそれを受け入れ、「峰屋」を自分に任せて欲しいと言う。竹雄(志尊淳)はそんな二人の誓いの証人を引き受ける。

しかし、峰屋に戻る前、「声明社」の早川逸馬(宮野真守)を再び訪ねると、踏み込んできた警官にとらえられ、収監されてしまう。そんな万太郎を救ってくれたのは、竹雄の報告を受け、警察署長に直談判に乗り込んできたタキ(松坂慶子)だった。そして無事に峰屋に戻った万太郎と綾は、それぞれの決意をタキに伝える。

綾は婿をとって峰屋を継ぎたいと言い、万太郎は、自分を勘当し、植物学を学ぶために東京に行かせて欲しいと言う。万太郎はこれまでも自身が峰屋の当主に生まれた宿命などについて「どうせ~」とぼやいてきた。そして、ここでも再び「どうせ」が発動。「わしは体が弱かった。もとから生き永らえるかもわからんかった」「生まれて来ん方がよかった」と口にし、タキに頬を叩かれる。

しかし、今回の「どうせ~」には、本当に伝えたかった続きがあった。それは、自分が恵まれてぬくぬく育ってきたこと、酒も飲めず、役に立たない「出来損ない」として心苦しかったこと。しかし、そう思うのはやめた、何故なら自分には植物が、本を読むのが、植物の絵を描くのが「好き」という「とびっきりの才」があったから。そして、「この才は峰屋に生まれたきこそ、育ててもろうたもんじゃ」と感謝し、恵まれてきたからこそ「わしにできることを果たしたい」と語るのだ。「槙野万太郎はおばあちゃんの孫に生まれてほんまに、ほんまに幸せでした」と言う万太郎を、タキは「許さんぞね」と涙を流しながら抱きしめる。その姿は当主と当主の「代役」ではなく、ただの祖母と孫だった。

家庭環境に恵まれ、天真爛漫で、才能豊かで……苦労や貧乏が好まれがちな朝ドラにおいて、モデルの牧野富太郎という人の「奇人変人」ぶりを知ってなお、視聴者の中にはここまで主人公よりも綾や竹雄に共感できると思っていた人も多数いただろう。

それでも万太郎が嫌われない理由に、神木隆之介の愛嬌と好感度、達者な芝居があった。しかし、ここに来て万太郎の「天真爛漫」は先天的なものではなく、自身の無力さを知り、諦念や悲観を手放し、発想を転換した努力の積み重ねと様々な人との出会いが影響している後天的なものであることが見えてくる。

そんな万太郎は、綾の心にも命を吹き込む。綾は職人たちを前に、自身が幼い頃に蔵に入ったときから酒造りに魅入られてきたこと、男に生まれたら良かったと自分を恨んだという胸の内を打ち明ける。そして言うのだ。

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