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和田秀樹の老後資金術「いくら貯蓄しても不安は消えないから」必要最低限の蓄えのすすめ

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和田秀樹

老後の資金については、誰しも気になるところです。しかし貯金があればあるほど幸せかというと、そうではないのかもしれません。ここでは、「老後の不安がみるみるうちに消えていく」と話題の新刊『わたしの100歳地図 65歳を過ぎても幸せが続く鉄則』から、シニア世代に向けた精神科医・和田秀樹さんのアドバイスをご紹介します。

▼和田秀樹さんの金言▼
【和田秀樹さんが指南】幸せな老後のために「脳の変化対応力」を今から鍛えよう

財産はすべて使いきる

いまの70代は、財産を子どもや孫に残すより、自分のために使いたいと思っている人の割合がどんどん増えていると聞いています。とはいえ、依然としてお金をもっているのに使わず貯め込んでいる高齢者は、ここ日本にはまだまだたくさんいるのも事実です。

日本の個人金融資産は日本銀行が定期的に発表している資金循環統計(2022年7〜9月速報値)によると、2022年9月末時点で個人(家計部門)が保有する金融資産残高の合計は2005兆円でした。このうち50%以上の1100兆円が現金・預金です。また、60歳以上の高齢者が個人金融資産全体の6割を超えて保有しているともいわれています。

本のテーマでもある「人生100年時代」に関わることでもありますが、平均余命が長くなり、老後の生活費や介護費用など自分の寿命をまっとうするまで貯蓄がもつかどうか心配だという人も多いことでしょう。しかし、老後の資金が足りないという不安は、資産をある程度もっていたとしても、いくら貯蓄が増えたとしても、実は不安そのものが消えるということはないのです。

老後30年間で約2000万円が不足する「老後2000万円問題」というものがありますが、たとえ2000万円の貯蓄ができたから絶対に安心かというと、おそらくそのようにはならないと思います。であるならば、老後のお金は必要最小限でいいのではないでしょうか。

70歳を過ぎ、からだの衰えを実感するようになれば、いつ病気になるかわからないですし、いつ歩けなくなってもおかしくはありません。もしかしたら明日、死んでしまうかもしれない。しかし、いちばん心配しなければいけないのは、これまで多くの時間をかけて一生懸命、必死に働いて貯めてきたお金を使わないまま死んでしまうことです。

わかりきったことですが、あの世にお金はもっていけません。それなら自分のやりたいことのためにお金を使い、人生を楽しむことに使うべきです。自分の裁量でお金を使うことができるのも70歳かせいぜい80歳くらいまでではないでしょうか。認知症になり、症状が進んで重度になると、お金を自由に使うこともできなくなります。

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