「不安に押しつぶされそうになったとき、この言葉が弱い自分の支えに」高橋大輔さんを変えたひと言とは?
この先もずっと自分の戒めにしていきたい
その長光コーチの言葉でもうひとつ、今も心の支えになっているものがある。それは「人間、悪いときに人間性が出る」というものだ。
「改まって言われたわけじゃないのですが、日々話したり、一緒にお酒を飲んだりしているときに、コーチ自身が気をつけていることとして、よくこういう言葉が出るんです。これもそんな感じで。でも聞いたとき、自分にはその点で反省すべきことがあるなぁと思ったんですね。
日頃、気持ちは基本フラットなのですが、何か問題が起きたとき、ヒートアップしてしまったとき、僕はつい八つ当たりをしてしまったり、ヒステリックになったりしてしまう。特にコーチやトレーナー、アイスダンスのパートナーの村元哉中ちゃんなんかに対しては、できないことがあると、ワーッとなって自分を止められないところがあるんです。そういうときは、この言葉を思い返しては反省しています。ずっと、自身の戒めとしていきたい言葉ですね」
長光コーチの自宅には18歳のときから下宿をしてスケートの指導だけでなく、ひとりの人間としての教えも授けられてきた。今そのありがたみを感じている。
また、「悪いときに人間性が出る」とセットのようにして高橋さんが心に留めているのは、コーチの「自分がやったことは自分に返ってくる」だ。ことあるごとに思い返す。
「悪いときに人間性が出る」
長年指導を仰いだ長光歌子コーチは、一個人としての生き方についても厳しく指導してくれた。結果が出ないとき、人生思うように行かないとき、そういうときにこそ本当の人間性が出る、内面を磨きなさいとの教え。
23年5月にアイスダンスの選手生活にピリオドを打ち、競技から引退をした高橋さん。今は、自らプロデュースや演出を手がけ、出演もするアイスショーの開催に向けて奔走し、多忙ながら充実した毎日を送っている。
「フィギュア人気がいわれていますが、料金の高さもあって、会場に出向いてもらうところまでは、まだなかなかいっていません。もう少し身近な存在にしたいですよね。
将来的には後進を育てるアカデミーを有するパフォーマンス集団をつくれたらいいなと思います。自分自身もいろいろなパフォーマンスを身につけていって、大きな意味でエンターテインメントに関わる仕事をしていきたいというのが目標です」
スケーターとしても、エンターテイナーとしても、ひとりの人間としても魅力的に成長したい。
「年齢が上がっても、意固地になったり限界をつくったりせずに、人の話をちゃんと聞ける大人でありたいですね。いつも何かに感動していきいきして、若々しく活気がある大人。それを目指して頑張ります」
PROFILE
高橋大輔
たかはし・だいすけ●1986年岡山県生まれ。
2010年バンクーバー冬季五輪で日本男子初の銅メダルを、世界選手権でも日本男子初の金メダルを獲得。14年に競技から引退するも、18年復帰。
20-21シーズンより村元哉中と組み、アイスダンスに転向。23年の世界選手権で日本歴代タイ11位に輝く。同年5月競技から引退。
高橋さんプロデュース「滑走屋」
至極の氷上エンターテインメントが75分間ノンストップで展開されるアイスショー。
出演/高橋大輔、村元哉中、村上佳菜子、友野一希、山本草太 他。
日時/2024年2月10日(土)・11日(日)・12日(月)11:00、14:30、18:00の3回公演。
会場/オーヴィジョンアイスアリーナ福岡
販売/イープラス、チケットぴあ、ローソンチケット
※この記事は「ゆうゆう」2024年2月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
取材・文/志賀佳織
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