信頼できる大人に囲まれて育った幸せ

もう一つ、今もアン ミカさんを支えている言葉がある。それはモデル時代にお世話になった、関西のとある協会の会長さんの言葉だ。会長はコレクションを支える人だった。

「モデルとしてパリコレなどに出た後の29歳のとき、両親のルーツを知りたくなって韓国に留学したんです。ところが１年の勉強を終えて帰国すると、日本はガールズコレクション全盛の時代になっていて、私に来た依頼はモデルではなくレポーターとしての出演。もう一度韓国に戻った私は悩み始めます。そのときに会長さんが私を訪ねてきてくださったのです。そしてこういう言葉をくださいました。『悩めるということは一生懸命生きている証しだよ。だから一生懸命悩みなさい』。おかげで自分なりの答えを出せたんです」

レポーターの依頼があったということは、その才能があるのかもしれない。そう受け止めたアン ミカさんは、帰国してＮＨＫのある番組キャスターの募集に応募、見事合格した。ちょうど韓流ブームが始まり、韓国語が話せるアン ミカさんは貴重な存在となった。すぐに会長にお礼の電話をしたところ、なんとすでに亡くなっていたことがわかった。

「ご病気で余命がいくらもないと知りながら、私を励ましに来てくださったんですね。彼からすると生きているからこそ悩める。命がなければ悩むこともできないのだと教えてくださったんだと思います」

その二人の大人の教えは今も生きる支えとなっている。

「私の人生で幸せだったと思うのは、信頼できる大人に囲まれて育ったことです。私自身も人間関係を適当に生きてはこなかったほうですが、恵まれた人生だと感謝しています」

将来に夢を描けない若者も多い昨今。「年を重ねるって素敵だな、楽しそうだなと思ってもらえるようになりたい」のだと言う。

「自分が脚本家になって描いていける自分の人生って、なりたい自分にいつでも書き換えられて楽しいよ、なんていうことを広める50代のお姉さんでありたいですね」　

PROFILE
アン ミカ

あん・みか●1972年韓国生まれ、大阪府育ち。
93年パリコレに初参加。その後、モデル、タレントとして、テレビ、ラジオ、ドラマ、CMなどで活躍。
漢方養生指導士、日本化粧品検定１級 など21個の資格を生かし、洋服、コスメ、ジュエリーなどをプロデュース。
2023年、『Let’ｓ Do アン ミカ！ アン ミカのポジティブ相談室』（講談社）を出版。

『365日、アン ミカ思考で幸運体質！ポジティブ手帳2024』

毎年大好評のアン ミカさんプロデュース『ポジティブ手帳』2024年版。
アン ミカさんが厳選するポジティブワードが毎週掲載され、二十四節気に応じた養生法や西洋占星術的な天体の動きも網羅。カバーは24年のラッキーカラー、スカイブルーになっている。
持ち歩いているだけでもハッピーでポジティブな気持ちになれそう。
（小学館　1980円）

※この記事は「ゆうゆう」2024年2月号（主婦の友社）の内容をWEB掲載のために再編集しています。


取材・文／志賀佳織

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ゆうゆう2024年2月号

「目指せ、一生ボケない暮らし」を大特集。90代でも元気に仕事を続けているエッセイストの海老名香葉子さん、ジャズクラリネット奏者の北村英治さんのお二人に「脳にいい毎日習慣」を教えてもらいました。また、専門家には「認知症との正しい向き合い方」と「ボケを防ぐ眠り方」を取材。老年精神科医の和田秀樹さんは言います。「認知症は誰もがなる病気。むやみに恐れる必要はありません」と。この特集を通して認知症についての理解を深め、できることから認知症対策を始めてみては。
もうひとつのおすすめ企画は「生きる力を与えてくれる『珠玉の言葉』」。鳥居ユキさん（デザイナー）、アン ミカさん（モデル、タレント）など、各界で活躍する6名の方に、人生を支え、道しるべとなった「珠玉の言葉」について伺いました。

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