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【虎に翼】「家族会議をします」と言うところは、寅子(伊藤沙莉)らしさとある種の不器用さを感じ、少し笑ってしまう

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田幸和歌子

そして、寅子の新潟への異動が決まり、優未を連れて行くとなったとき、たまった歪みがついに爆発する。

花江が涙ながらに責め立て、花江の子供たちも、優未が寅子の前ではいい子でいようとすることを伝える。先週、寅子がろくに答案も見ず、優未を褒めもせず、もう少しがんばれば100点が取れるとした算数の「84点」のテスト。これは実は84点ではなく、31点しか取れなかったものを赤鉛筆で偽装した嘘の「84点」だった。皆が言うように見ればすぐわかるのに寅子は全く見ていなかったことが露呈する。

この象徴的であり自分がいかに何も見ていないか分かりやすい出来事によって、ようやく寅子は優未との間にできてしまった深すぎる溝に気付く。そして弟の直明(三山凌輝)に、優未が見せているのは本当の顔ではない、新潟にはひとりで行くべきだととどめを刺されてしまう。

別の夜に帰宅した際、家の窓の外から垣間見えた、屈託のない、「スンッ」もなく天真爛漫な笑顔を見せ花江の息子たちと本当のきょうだいのように遊ぶ娘の姿を見て、涙を流す寅子。

優未や花江たちとの溝にようやく気付き、なんとかしようとするのだが、「家族会議をします」とかしこまらせるようなところには、まだ自己中な面も感じるが、寅子がこれまで歩いてきた自分の中の正義と家族との向き合い方という意味では、これが寅子らしさというか、こういうかたちでしかうまくやり取りができないある種の不器用さを感じ、少し笑ってしまう。正面から不満をぶつけてもらい、受け止め、解決法や取り組み方を考える。強者の寅子だからこそできることだ。

家族会議の結果、優未は寅子と新潟に行くことを決める。それは、あくまで優未の意思としてのものではあるが、果たしてどこまで正直な思いなのか。母への「スンッ」はどの程度残されているのか。

果たして寅子の「正義」のかたち、優未との関係性はどう変化していくのか。大きく展開も動きそうな第16週に注目である。

「虎に翼」第75回より(C)NHK

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