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【虎に翼】優三(仲野太賀)の最大の弱点を受け継いでいた娘。「スンッ」のない思い出とともに溝は埋まりはじめた!

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田幸和歌子

いっぽう、この新潟編で注目なのが、大きな溝が埋まらぬまま二人だけで始まった、娘・優未(竹澤咲子)との関係性、優未が実の母である寅子にむける「スンッ」の行方である。

寅子は、花江(森田望智)らに真の優未の姿を突きつけられ、大きなショックを受けた。新潟での二人での新生活が始まるのをきっかけに、なんとかそれを解決しようと母娘の関係、距離を気に掛ける。しかし、優未はまだ「いい子」であろうと自分でご飯の準備をしたり、テストの点数をふたたび偽装しようとしたりする。優未が年齢以上に大人なのか、母娘の関係をよくすることが大事だと空気を読んで行動することで母娘の関係性を構築しようとすることに変わりがないことは、まだまだ溝は埋まらないことを強く感じてしまう。

「虎に翼」第80回より(C)NHK

まだ小さな優未の心労が気がかりではあるが、テストの点数をまたごまかそうとしたことを誤り、久しぶりに気持ちを向き合わせたことで、優未はテストのたびに緊張してお腹が痛くなってしまうということを口にする。亡き父・優三(仲野太賀)の最大の弱点を受け継いでいたのである、それと同時にそんなことも知らなかった寅子。

その事実を知り、もっと聞きたい!と父のダメエピソードを嬉しそうに聞きたがる優未。それをすぐノって話せない自分に気づいた寅子は、自分が優三の死を今なお受け入れていない部分があることに気づかされる。新潟で再会した航一(岡田将生)が口にした、「死を知るのと受け入れるのとは違う。事実に蓋をしなくては生きていけない人も」という言葉が響く。

三条支部で山の境界線をめぐる民事調停を一緒に担当するものの、さまざまなトラブルに直面したうえ、寅子に波風を立てず立つ鳥跡を濁さずでいてほしいと懇願した書記官・高瀬(望月歩)とも、最終的には寅子が頭を下げ、これからも波風は立てるが、上司として、人としてできることをしたいと、高瀬への「スンッ」を取り払うことで高瀬の本音を引き出すことができた。その結果、高瀬を処分するなど「持ちつ持たれつ」問題に正面から立ち向かうことで、「田舎」という社会で寅子らしさを発揮し、自分の正義のもとしっかり歩く道が開け始めたのではないだろうか。

そして、優未との関係性にも少しずつ影響がみられはじめた。明日のおやつにと、高瀬にもらったキャラメルを、「今食べちゃダメ?」と言う優未。「おいしいもの、一人で食べてもつまんない」からだと、子供らしいわがままを言う。こんなことすら「いい子」であろうとしていた優未は寅子にだけは言えなかったのだ(おそらく花江には言えていたのだろう)。寅子の頭に、優三ともそうであったことがよぎる。大切なことを寅子はたくさん忘れていたのかもしれない。「スンッ」のない、亡き優三の思い出とともに溝は埋まりはじめた。

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