【虎に翼】寅子(伊藤沙莉)3度目の恋 「ん?」となった2箇所とは?寅ちゃんは“恋愛脳”になっていたのか
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田幸和歌子
1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。困難な時代に立ち向かう法曹たちの姿を描く「虎に翼」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください
★前回はこちら★
【虎に翼】航一(岡田将生)の「ごめんなさい」に秘められた思い。個人で背負う戦争責任の重さとは
NHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『虎に翼』。前半に見ていた〝虎翼〟と、このところ見ている〝虎翼〟は、はたして同じドラマなのだろうか? そんなことも考える第19週「悪女の賢者ぶり?」だった。
今週描かれた大きなテーマは「結婚」だ。少し前から、それぞれがその気持ちに気づいているのかどうかを含めた寅子(伊藤沙莉)と航一(岡田将生)の関係の行方だ。これまで堅いというか、自分をさらけださない航一ではあったが、前週に航一から明かされた、「総力戦研究所」への所属と、敗戦を確信しながらも開戦を止められなかったという罪の意識。そこに、「寄り添って一緒にもがきたい」と寅子が共鳴したことで、一気にふたりの距離が縮まっていった。ドラマとしての展開は、つまりラブストーリー的要素が盛り込まれる流れになってきた。
もちろん、これまでの寅子にもラブストーリー的展開は何度も描かれてきていた。花岡(岩田剛典)との不器用な距離の詰め方(婚約者登場というやるせない運命も含めて)、そして、寅子が社会的信用を得るためというところから始まり、時間をかけて自身の愛情に気づいていく優三(仲野太賀)との結婚と戦争による死別という悲劇、どれも印象的だ。作品的には寅子3度目の恋のような位置付けとしていいのだろうか。
夫を亡くした女性が新たな恋愛をしてはいけないとは誰も言わない。航一だって妻と死別している。誰かを好きになるという気持ちは、誰にも止められるものではないだろう。しかし、その恋愛感情の処理の仕方に、どこか違和感をおぼえるというか、女性の地位向上、女性が法曹界で働くということを第一義としていたころと現在の支部長・寅子は、冒頭に記した通り、変わってしまったというか、どこか別のキャラクターのように感じてしまうような部分や、寅子と航一の関係を深めていく流れのためとしか思えない、「ん?」となる部分もあった。
「ん?」となるひとつ目は、部下である高瀬(望月歩)と小野(堺小春)が「友情結婚」するという展開だ。友情結婚、これはまさに寅子と優三が結婚するに至った理由づけそのものである。しかし、その二人の思いを聞いた寅子は、慎重に考えたほうがいいとアドバイスする。んんん!? これまでの寅子だったら、自分の経験となぞらえて、「友情結婚と言っていても、大切な存在であることにいつか気づくはずよ」など、むしろ積極的にプッシュしてくれそうな気がしたのに水を差す側とは。なんとなく、社会的立場が変わったんだなと思ってしまうような反応だった。それはこの時点での寅子が「恋愛脳」になっていたからだということだろうか。
次なる19週の「ん?」は、そんな寅子の航一への思いの肯定化である。ある日寅子が帰宅したところに自宅にいたのは花江(森田望智)だ。故郷が新潟ということもあるが、唐突な登場にまずびっくり。その花江がやってくるに至ったのは、他でもない愛娘の優未(竹澤咲子)からの手紙だった。母の気持ちに気づいた同級生よりも気持ちは大人キャラになった優未は、それをなんとかしてあげたい思いで花江(森田望智)に手紙で知らせていたのだ。話をするなかで、自分の気持ちは認めつつも罪悪感でそこから先には進めないという寅子。そこに「お父さんはお母さんに恋をしてほしいんだから」というセリフとともに参入してきたのが優未だった。