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「SKYキャッスル」すべての悲劇はあの女を中心に起きている⁉︎19〜24話レビュー【韓国ドラマ】

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藤岡眞澄

そして、決定的な瞬間が訪れる。ヘナの度重なる挑発にイラついたイェソが放った「父親が誰かもわからないくせに」というひと言に、ヘナは我慢できずに言い返す。「あんたの父親が私の父親よ」と……。

イェソ役のキム・ヘユンがすばらしい。成績抜群で頑張り屋だけれど、自己中で周囲から煙たがられているイェソ。特に、序盤の読書討論会で自分の意見を得意顔で吹聴するシーンは、小生意気な女子高校生に成りきっていて、誰もが「この子、嫌い」と思ったはず。

だが、家にわが物顔で入り込んできたヘナに振り回されるあたりからは、感情を抑えきれなくなったリ、切ない思いを味わったり、気持ちの揺れを繊細に演じきる。不安から逃れようとキム先生に心酔していく表情など、真に迫っていて心配になるくらいだ。

ヘナはイェソを振り回していく……

ところで、韓国には「銀のスプーンをくわえて生まれてきた=裕福な家庭に生まれた」という英語の慣用句を引用して、SNS上で流行した「スプーン階級論」というネットスラングがある。

スプーンの材質、つまり親の経済力や社会的地位によって階層が決まり、本人の努力次第で階層がアップすることはない、という意味。若者の諦念がにじむ。日本の「親ガチャ」も似た発想だ。

富裕層の子どもは「金のスプーン」、中間層は「銀」、庶民層は「銅」、最下層は「土」、つまり、すくえないスプーンをくわえて生まれる、とされる。もちろんSKYキッズがくわえるのは「金のスプーン」だ。

親の財力によって、塾や家庭教師、入試コーディネーターなどの私教育に投資できる金額には大きな差が生まれる。その結果は、成績や進路の格差としてあらわれ、富裕層と貧困層の2極化は固定化する。SKY住民が望むところだ。

反面、教育投資は子どもへの圧にもなりうる。ハーバード大に合格したと嘘をついたセリのように、親の欲望に押しつぶされそうになる子どもの悲痛な叫びと、富裕階層に執着する親の狂奔ぶり、そして家庭崩壊が進んでいく過程がリアルに描かれる中盤。それは、行き過ぎた学歴社会への痛烈な風刺だ。

受験に熱心すぎるイェソの母ソジンとセリの父ミニョクがともに貧困「土のスプーン」階層出身で、それに異議を唱えるミニョクの妻スンヘが上流「金のスプーン」階層出身、というのも妙に生々しい。

疑問を1つ。イェソはソウル医大を目指す頭脳明晰女子。超多忙で出世競争に明け暮れる、父のような医師になって幸せな結婚や人生に恵まれるのか、イェソも両親も不安に思う様子は微塵もない。だが、大学病院のシーンに登場するのは、全員が男性医師。女性医師の姿はない。これもまた、リアルな現実ということか……。

驚くしかない事件が起き、SKYキャッスル全体に疑心暗鬼が充満する。そんな波乱の25話以降では、サスペンス展開に探偵気分が味わえる。

サスペンス展開が待っている……

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