【風吹ジュンさん】72歳「これからの10年は間違いなく面白い」と語る理由とは?
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ゆうゆう編集部
50代で子育て卒業宣言をしてから、中国茶に旅に登山にと、自身の楽しみを大事にし、真剣に向き合い打ち込んできた風吹ジュンさん。仕事もますます順調で、今とても充実した日々を送っていると言います。いい人生を送る秘訣は何なのか、70代から目指すところは何か、その思いをじっくり伺いました。
PROFILE
風吹ジュンさん ・女優
ふぶき・じゅん●1952年富山県生まれ。75年ドラマ「寺内貫太郎一家2」で女優デビュー。
映画『無能の人』(91年)で第15回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を、『コキーユ~貝殻~』(99年)で報知映画賞主演女優賞を受賞。
他にもドラマ、舞台、CMと幅広く活躍している。
主な出演作に、映画『魂萌え!』『海街diary』『浅田家!』、ドラマ「八重の桜」「半分、青い。」「やすらぎの刻~道」「大豆田とわ子と三人の元夫」など。
やることが増えてきて、毎日全然飽きない
ここ数年、映画にドラマにコマーシャルにと、以前にも増して風吹ジュンさんの活躍が目覚ましい。ひとつの作品が終わったらすぐに次の作品……とコンスタントに出演が続いている。しかもどの作品でも、必ず風吹さんならではの鮮やかな印象を私たち見る側に残してくれている。
「年を重ねるごとにやることが増えてきているのか、時間が足りないんです。だから毎日全然飽きないですね。実は私も若い頃は、年をとったら退屈するのかなというイメージをもっていたんです。でも全然違うね(笑)。おかげさまで、最近特に楽しい仕事が多いんですよ。私の志向に合う好きなものが多くて、好きな人に出会えているので、すごく楽しいんです」
いきいきと話す風吹さんの表情からは充実した毎日がうかがえて、うらやましいほどだ。
向田邦子さんに楽しんでもらえそうな作品
その風吹さんの最新出演映画『愛に乱暴』(吉田修一さん原作)が8月30日に公開される。主人公は江口のりこさん演じる主婦・桃子。手作り石けん教室の講師をしながら、小泉孝太郎さん演じる夫・真守と、真守の実家の敷地内の離れに住まい、丁寧な暮らしを送っている。風吹さんが演じるのは、真守の母・照子。夫亡き後、息子を気にかけながら母屋で暮らしているという役どころだ。
ページを繰るごとに「事と次第」が明らかになっていく様子は、サスペンスめいてもいて、ぐいぐい引き込まれていく。
「当初、脚本に書かれていたのは、もっと意地悪なステレオタイプの姑だったんですけど、それだったらもっと適役の人がいるかもしれない。でも監督があえて私を使ってみたいと思ってくださったのは、挑戦なのかなとも思ったんです。なのでそこを意識して、ひとつの場面から彼女の暮らしや人生がどう表現できるか、そこは監督とすごく話し合いました。距離感や緊張感を表せたらいいなと思って演じていましたね」
物語が進むごとに、タイトルの意味が突き刺さってくるような作品だ。愛とは果たして何なのか。
「三人三様の『愛に乱暴』が描かれていて、女性同士でも夫婦でも語り合える映画ですね。向田(邦子)さんがもしご覧になったら、楽しんでくださるタイプの作品なんじゃないかなって感じているんです」
20代の俳優に聞かれる「その服どこのですか?」
仕事を選ぶ基準は、第一に脚本が面白いかどうか。そして監督の方、共演の役者さん、どこで配信されるかも考える。それと大事にしているのは「勘」だ。私生活でも暇を見つけては足繁く映画館に通って映画を観まくる。そんな映画ファンとしての直感も尊重する。
「先日、『オッペンハイマー』から『マッドマックス:フュリオサ』『関心領域』と一気に3本観たの。メチャクチャ面白かった!」
この旺盛な好奇心、フットワークの軽さ。これもきっと充実する日々の大きな原動力なのだろう。その柔軟な感性は、現場の若い俳優たちとの距離も一気に縮める。私服のセンスが抜群にいいことで知られる風吹さんだが、着ている服について「それ、どこのですか?」と20代の俳優さんに聞かれることも多いという。
「私が『何歳だからこの格好をしなきゃいけない』っていう固定観念にとらわれていなくて、好きな格好をしているからだと思うんだけど、そういうときは『ウッシッシ!』って思っちゃう(笑)」
敬愛する料理家・小堀紀代美さんの料理教室にも、若い世代を中心に俳優仲間をどんどん招いて、交流の場を設けてきた。今やメンバーは50人以上。
「夫のことをボヤいたり(笑)、健康や美容の相談をしたり。みんなが気楽に会話できて息抜きできる場になっていればいいですね」
これからも、面白いものにはどんどん飛びついていく
50代で中国茶や旅の面白さに目覚め、60代は山登りに邁進。常に「楽しみ上手」な風吹さんだが、驚くのは、どれもある水準まで極めて、しかも周りの人にもその楽しみを広げていることだ。
「それは年をとって気づくことがあるからだと思いますよ。そうするとどんどんワイドオープンになって、次もワイドオープン、次もワイドオープンって開けてくる。その開けてくることが年をとるっていうことなんですよね」
ただそれには、いつでもどこでも自力で動けて楽しめる、フィジカルな強さも必要だ。それを登山と毎週1回必ず行うエクササイズ・ジャイロトニックで鍛えてきた。今70代に入り、これからの10年をどう思い描いているのだろう。
「間違いなく面白くなるでしょうね。やはり、社会情勢も含めていろいろな情報が経験として深く入ってくるようになるには、年をとらないとダメなんです。この5〜6年でエンターテインメント業界も、コンプライアンスが徹底されて、力技でもっていくような形ではなく、穏やかになってきた。やっと人間は成長できてきたのかなという気がします。映画やドラマに限らず、そうしたいい仕事場からいろいろ生まれてきているから、飛びつくものがいっぱい。楽しもうと思っています」
【INFORMATION】『愛に乱暴』
桃子(江口のりこ)は、結婚8年になる夫・真守(小泉孝太郎)と、同じ敷地内の母屋に住む姑・照子(風吹ジュン)との3人暮らし。手作り石けん教室の講師をして丁寧に暮らす桃子を、しかし不穏な出来事が次々と襲う。しだいに居場所を失っていく桃子の行き着く先は……。
●出演/江口のりこ、小泉孝太郎、馬場ふみか、風吹ジュン 他
●原作/吉田修一『愛に乱暴』(新潮社刊)
●監督・脚本/森ガキ侑大
●脚本/山﨑佐保子、鈴木史子
24年8月30日より全国公開(配給/東京テアトル)
Ⓒ2013 吉田修一/新潮社
Ⓒ2024 「愛に乱暴」製作委員会
※この記事は「ゆうゆう」2024年9月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
撮影/玉置順子(t.cube) スタイリング/岡本純子
ヘア&メイク/草場妙子 取材・文/志賀佳織
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