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【虎に翼】実質プロポーズをしても、なんとなくスルーされる航一(岡田将生)がうっすら傷ついてそうでせつない

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田幸和歌子

【虎に翼】実質プロポーズをしても、なんとなくスルーされる航一(岡田将生)がうっすら傷ついてそうでせつない

「虎に翼」第97回より(C)NHK

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1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。困難な時代に立ち向かう法曹たちの姿を描く「虎に翼」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

★前回はこちら★
【虎に翼】寅子(伊藤沙莉)3度目の恋 「ん?」となった2箇所とは?寅ちゃんは“恋愛脳”になっていたのか

伊藤沙莉主演のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『虎に翼』の第20週「稼ぎ男に操り女?」が放送された。

昭和30(1955)年、新潟での3年の赴任期間を終え、東京に戻ることになった寅子。東京地裁の判事として寅子が担当したのが「原爆裁判」だ。

原爆裁判とは、広島・長崎の原爆被爆者たちが、原爆投下は国際法違反であると国を相手取り起こした訴訟である。原爆によって家族や家を失い、被爆の後遺症によりまともな生活が送れないため日本政府に賠償を求める。はじめて原爆投下の違法性が問われた裁判だ。裁く相手は、本来であれば原爆投下をおこなったアメリカである。ここから寅子たちはどう裁いていくのか。寅子のモデルとなった三淵嘉子さんの人生の中でも重要となるこの裁判がついに描かれるときがきた。

放送週の木曜日は8月15日、そう、終戦の日だ。この週にこの裁判を合わせてきたことも意義深い。アメリカに対する裁判ということで、テレビドラマとしてもきわめて扱いにくい内容かもしれないところに正面から切り込む姿勢と、そこをどう描いてくれるのかを考えるとこの先の期待度は大きく高まる。

舞台が東京に移り、少し懐かしい顔ぶれが続々登場する。まずは桂場(松山ケンイチ)、頼安(沢村一樹)、多岐川(滝藤賢一)、雲野(塚地武雅)……寅子は新たに東京地裁民事第二十四部の裁判官に任命された。裁判長は香淑(ハ・ヨンス)の夫でる汐見(平埜生成)、香淑も再び法律の勉強を始めつつあるという嬉しい報告つきだ。

そして、「よねさんだって、やっと……」と花江が口をすべらせた、よね(土居志央梨)の襟に輝く弁護士バッジは純粋にとても嬉しい出来事だ。名刺の「山田轟法律事務所」という名称も輝かしい。轟(塚純貴)と並んで梅子(平岩紙)のものと思われるおにぎりを頬張る姿はとても微笑ましいシーンだ。

「虎に翼」第97回より(C)NHK

さて、寅子と航一(岡田将生)がお互いの気持ちを通わせてから2年がたつ。「正式なお付き合い」「永遠を誓わない愛」という関係は、時が流れてどうなったのか。

「結婚は幸せの終着点ではなくて、選択肢の一つにすぎないわ」
こう寅子は言う。結婚とは永遠の誓いではない、あくまで契約のひとつとでもいうようなドライな視点。放送第1回でお見合いをすることになったときからずっと結婚するということについて「はて?」と考え続けてきた寅子。優三(仲野太賀)との結婚だって、最初は自分の仕事を軌道に乗せるための契約結婚のようなところから始まったものだった。法律家となり時も流れたこの段階ではなおさらそうだろう。これもまた、現代的な感覚に近い。

しかしそれでいて、「永遠を誓わない愛」という言葉を言い訳に、その契約による「責任」を背負わないようにしているような、どこか逃げ、狡さのようなものを感じてしまったりもする。

「家族を紹介したい」「一緒に住みますか?」と実質プロポーズしても、寅子になんとなくスルーされたり、結婚していない男女がおおっぴらに逢瀬を重ねることに否定的な旧来的感覚の桂場に叱責されるものの、「私たち独身どうしですよ。よからぬ噂も何もあるわけないじゃないですか」とあっけらかんと口にする寅子に、航一がうっすら傷ついてそうなところはちょっとせつない(聡い子である優美のほうが察しているところが、優三のころと変わらぬ寅子の鈍感さを強調する)。

「虎に翼」第98回より(C)NHK

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