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【虎に翼】桂場(松山ケンイチ)が目指すものとは?大河「平清盛」での孤独な姿が重なって見えてきた

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田幸和歌子

結果として、朋一は裁判官をやめることを決心する。
「朋一のこと、桂場のこと、少年法や家裁のこと、考えることが盛りだくさんな寅子です」と語り(尾野真千子)で伝えられるように、最後まで寅子が向き合うことも多い。

少年法の改正と並行して進むのが、よね(土居志央梨)と轟(戸塚純貴)が受け持つ、美位子(石橋菜津美)の尊属殺についてのストーリーだ。

美位子が背負う十字架に、よねは自らのトラウマと法の道に進んだ「原点」の記憶を重ね合わせる。だからこそ山田轟法律事務所を訪れる依頼者の相談で自分を慰めるかのような美位子に、
「人を見て安堵したり、自分の身に起きたことと比較したりするのはやめろ」
と叱責したうえで、
「お前が可哀想なわけでも、不幸で弱いわけでも決してない。それだけはわかってくれ」
と伝えることができたのだろう。

両親とそれに並ぶ親族を殺害する「尊属殺」が一律として重い罪に問われることは果たして正しいのか。尊属殺の罪の重さは「法の下の平等」に反すると声をあげた穂高が存命中に法改正が行われていたとしたら、美位子が抱える悲劇は免れたかもしれない。法改正と尊属殺の問題は、決して別の場で進む問題ではないことを感じさせてくれる。

「虎に翼」第124回より(C)NHK

次週、最終週。よねと轟は、いよいよ最高裁という大舞台に立ち、集大成のような「戦い」を繰り広げることになる。半年におよぶ法曹ドラマの最終ターンをここに設定するという選択にも驚かされる。

強いものにさらに強さが加わるという意味での「虎に翼」。最終週のサブタイトルはズバリ「虎に翼」。桂場は、よねと轟は、そしてと寅子は。それぞれ翼を獲得し、より強くなることができるのか。「法の下の平等」は夢物語の正論ではなくなるのか。はたして令和の現実はどうなのか。未来への力強さを感じさせてくれる結末に期待したい。

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