【おむすび】公式SNSで異例の注意喚起—震災の描写へ。平凡でありたいと願う結(橋本環奈)の心情が明らかに
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田幸和歌子
1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。平成青春グラフィティ「おむすび」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください
▼前回はこちら▼このドラマの楽しみ方が見えてきた!「じわじわくる」メンズキャラは誰?【おむすび】第3週
「平凡な日常」の前にあったこと
橋本環奈主演のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『おむすび』の第4週「うちとお姉ちゃん」が放送された。
本作の作品世界や登場人物のキャラクターに大きな影響を与えている出来事として描かれているのが1995(平成7)年に発生した阪神・淡路大震災だ。
震災発生時、ヒロイン一家の米田家は神戸在住。これまでも少しずつ登場人物の口から語られるなどしていたが、父・聖人(北村有起哉)の出身地である現在の福岡県糸島市に戻ることになったのも被災したことによるようだ。
第1話で海に飛び込み「うちは朝ドラヒロインか?」とメタ視点でのセルフツッコミを盛り込むなど、ある意味での朝ドラヒロイン「らしさ」、はつらつとした笑顔を見せる結の心の奥底に潜む震災のトラウマ。「伝説のギャル」の妹ということで勧誘されることから始まったギャルサーのギャルたちに翻弄される姿に目がいきがちだが、そのドタバタの中に少しずつ過去の震災が落とした影が印象づけられていくのはむしろ効果的だ。
ほぼすべての視聴者は、過去に発生した震災、その衝撃を知っている(当時まだ生まれていない世代もそれは事実として知っているだろう)。過去の結が震災が近づくある日、神社で吹く風に得体の知れない恐怖を感じたシーンの背筋がぞくっとするような感覚は、こちらにもその恐怖が共通体験として刻まれているからこそだ。戦争経験のない私たちだが、震災の描写から受け取るリアリティは、それに近いものもあるのではないだろうか。
もしかしたらこちら視聴者側が受け取りきれていないのかもしれないが、現在の結がギャルサーのドタバタに巻き込まれたり、書道部や野球部の男子たちと仲良くしたりするなんでもない「平凡な日常」は、その震災を乗り越えた先にあるものであることは確かだろう。
歩(仲里依紗)がついに本格登場
さて今週は、そんな「平凡な日常」に、ギャルサーと現在の米田家にとってのキーパーソン的な存在である姉・歩(仲里依紗)がついに本格登場した。「反省会」タグが盛り上がってしまうなど、視聴者には現時点まで決して好評とはいえない本作ではあるが、歩の登場は流れが変わる存在として期待する向きは強かった。
とくにギャルサーパートは、念願の町のイベントでの「パラパラ」披露を控えるタイミングでもある。ルーリー(みりちゃむ)たち現在の「ハギャレン(博多ギャル連合)」にとって憧れの存在である歩。現在の米田家の一部のギスギスの元凶でもある歩。ギャルたちに活気をもたらせてくれるのか、米田家をよくも悪くもかき回してくれるのか、いずれにせよ、その登場でストーリーは大きく動く、「歩さえ来てくれたら!」と期待する視聴者も多かっただろう。
しかし。派手髪は黒髪になり、伝説のギャルとして名をはせ、一時はギャルモデルもしていた面影もなく、どことなくやさぐれ覇気のない雰囲気をかもしだす現在の歩は、ルーリーたちのワクワク感に対して「超ダサい」と思い切り水をさしてしまうなど、むしろどんより感を増幅させるようなキャラクターとして登場した。ここでもともと家庭を壊した存在と歩を憎む結が、そんな歩に対して反発することがパラパラ本番へのやる気につながったりするという効果を生んだりもした。
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