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このドラマの楽しみ方が見えてきた!「じわじわくる」メンズキャラは誰?【おむすび】第3週 

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田幸和歌子

このドラマの楽しみ方が見えてきた!「じわじわくる」メンズキャラは誰?【おむすび】第3週 

「おむすび」第14回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。平成青春グラフィティ「おむすび」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

▼前回はこちら▼「このあときっと面白くなるはず!」と視聴者が期待する理由とは?【おむすび】第2週

カツラのインパクトが強烈すぎて……

橋本環奈主演のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『おむすび』の第3週「夢って何なん?」が放送された。連日ネットニュースや視聴者の感想などが、いろいろな意味でにぎわっているが、なんとなく少しずつこのドラマのひとつの「楽しみ方」のようなものが見えてきたような気がする。

第3週で印象に残る(残ってしまった?)シーンのひとつが第12話の祖父・永吉(松平健)と父・聖人(北村有起哉)の確執のきっかけを描いた回想シーンだ。

この回想シーンの前段となるのが、ヒロイン結が糸島のイベントでギャルサー「ハギャレン」たちと一緒にパラパラを踊る練習のため門限を破ってしまった一件がある。このとき幼なじみの陽太(菅生新樹)が結を守るために、結と交際していると嘘をつく。その嘘にショックを受ける聖人。そんな聖人に、「自分の子供ば信用できんで何が親か!」と永吉が怒鳴りつけ、聖人は飲みに出てしまう。

序盤から食卓シーンなどでちょこちょこと二人のやり合いは描かれているが、なぜ親子仲が悪くなってしまったのか。視聴者と結の疑問にこたえるように回想シーンへと突入する。

……のだが、この回想シーンに登場する若かりしころの永吉と聖人の外見の作り込みというか、なによりも時代ごとのカツラのインパクトが強烈すぎて中身が入ってこないレベルである。

「おむすび」第14回より(C)NHK

コント、あるいは舞台喜劇的という視点でみると

平成なかば、現在の米田家が福岡に移り住んだ最大のきっかけが1995(平成7)年に発生した阪神・淡路大震災であることは序盤から少しずつ描かれてきている。今週も、神戸に戻るという提案を聞いた結が、当時の記憶をフラッシュバックさせ動揺するという場面が描かれている。

この先、来年1月で発生から30年を迎える阪神・淡路大震災がどう描かれていくのかも、1週目の本欄でも触れたが、この震災をヒューマンドラマとして見事に描いた『朝顔』の根本ノンジ脚本なだけに、期待している部分ではある。とはいえ、大災害とは今を生きる人たちにとって、さまざまな思いを抱える決して忘れることのできない出来事でもある。

そのいっぽうでこのドラマは、平成を生きるごく平凡な、たいして大きなことも起こらない人々を描いていくということもメインテーマとして掲げた作品でもある。聖人と永吉、そして長女であり伝説のギャル・歩との3代にわたるちょっとした分かり合えなさ。これもどこの家庭にも大なり小なりある、ある意味で「平凡な」問題かもしれないが、修復不能かもしれない深い溝になっていることもある。そこもまた深刻だ。

それらを深刻に描くと、「平凡」という色が薄くなってしまうかもしれない。それゆえに、ちょっとコント味を加えつつ、重くなりすぎず気軽に見てもらおう、クスッと笑ってもらいながら希望を感じてもらおうという意図はあるのかもしれない。

コント、あるいは舞台喜劇的という視点でみると、「なんだかなぁ」といったふうに見られがちな演出も、「ベタ」として受け入れられるのではないだろうか。

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