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【おむすび】「チンして」と言う天真爛漫さが、今の結(橋本環奈)と違う。どれだけ大きな影を落としたか!

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田幸和歌子

【おむすび】「チンして」と言う天真爛漫さが、今の結(橋本環奈)と違う。どれだけ大きな影を落としたか!

「おむすび」第21回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。平成青春グラフィティ「おむすび」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

▼前回はこちら▼【おむすび】公式SNSで異例の注意喚起—震災の描写へ。平凡でありたいと願う結(橋本環奈)の心情が明らかに

「平凡」のコントラストが高まった

1995(平成7)年1月17日5時46分。阪神・淡路大震災発生。

NHK連続テレビ小説『おむすび』第5週のサブタイトルは「あの日のこと」。「あの日」とは、まさにこの震災の日を中心としたものであろう。当初から阪神・淡路大震災を描くとされ、来年には発生から30年という節目を迎えるいま、あらためて当時に向き合い、現代を生きる視聴者につなげていく、そんな思いも込められているのではないだろうか。

物語の中で描かれる「現在」である2004(平成16)年の中で「平凡な日常」に憧れるヒロイン・結(橋本環奈)。なぜ結は平凡を望むのか。それはこの震災そのものと、それによって生じた人間模様などが背景にありそうなことはこれまで少しずつ描かれてきた。大きな出来事であり、どこでどのように震災そのものが描かれるのか気になるところでもあり、意外に早くきたという印象も受けた。

「いつも寂しそうな顔してた」
栃木から野球留学中で「福西のヨン様」とも呼ばれる翔成(佐野勇斗)にそう指摘され、結の口から過去が語られ、回想シーンに突入し、ぐっと過去の世界に引き入れられる見事な演出だ。

放送開始以来、序盤にひたすら「平凡」であることを描いてきた。それゆえに一部では低い評価を受けることにもつながってしまったが、阪神・淡路大震災は、言うまでもなく、社会だけでなく多くの人々の心にも大きな衝撃を与えた大災害である。これまで結の高校生活を軸に、「平凡」「普通」をじっくり描き続けてきたからこそ、大災害に直面した事実で「平凡」のコントラストが高まる。

「おむすび」第23回より(C)NHK

どうして今の結になったのかが——

そんな歩が高校に進学するが、入学式当日に登場したのは、金髪ロングヘアにミニスカートの制服、ルーズソックスといった、“ザ・ギャル”といった姿に豹変。これに父・聖人(北村有起哉)は激怒、現在に至るまで続く歩と聖人の親子の溝は、ここで大きく深まってしまうことになる。過去にも描かれた通り、「家を捨てた」かのように放浪状態を続けていた祖父・永吉(松平健)との確執もあり、そんな様子を成長しながら見てきた結がどうして今の結になったのかがよく理解できる。

聖人が抱え続けてきた思いも、やはり現在の聖人が泥酔し、歩が高校時代に警察に補導されたことなどへの後悔の念を回想し告白するかたちで描かれる。それを偶然耳にしてしまった歩と結。

震災によって、結たち米田一家は避難生活を送ることとなる。避難所で配られた2人で1つだけの「おむすび」。貴重な支援に対して震災当時6歳の結(磯村アメリ)は無邪気に「チンして」というなど、今のどこか遠慮がちに見える結とは違う天真爛漫さを感じる。これもまた、過去4週でじっくり描かれてきた現在の結像があることで、どれだけ大きな影を落としたかがよくわかる描かれ方だ。

もちろん結だけではない。当時中学生、思春期真っ只中だった姉の歩(高松咲希)も、まだ幼い結以上に大きな心の傷を負っていた。一緒にまだブレイク前の安室奈美恵のCDを聴いて楽しんだ親友・真紀(大島美優)は、震災で倒れた家具の下敷きとなって亡くなった。ほどなく現在暮らす福岡・糸島に移り住むが、心を閉し、自室で引きこもる日々が続いていた。

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