【ひろみちお兄さん】病気を経て、今思うこととは?「ネガティブな言葉はスルーしていい!」
リハビリの一歩一歩が家へと続く道
搬送された病院で下された診断は「脊髄梗塞」。10万人に1人ともいわれる難病だった。地方の病院に3週間ほど入院した後、東京の病院へ。検査と投薬を経て、リハビリ専門の病院に転院した。
「病気になり、今まで普通に歩けていたのに歩けなくなって、いちばん感じているのは『当たり前のことは当たり前じゃない』ということ。歩けることは当たり前じゃなかったんです。今まで当たり前だと思って、感謝の気持ちをもっていなかった自分にも気がつきました。医療従事者の皆さんや家族、関わっていた子どもたち……いろんな方から応援メッセージなどをいただいて、自分はこんなにも人に支えられていたんだ、人って一人じゃ生きていけないんだなとつくづく思いました」
「『当たり前』のことは当たり前じゃない」
前日まで普通に歩けていたのに、脊髄梗塞という病気になって生活が一変。「いざ倒れて、今まで当たり前だと思っていたことが当たり前ではなかったのだと思い知らされて。同時に周囲の支えにも改めて気がつきました」
入院中はリハビリに加え、自主トレーニングにも励んだ。
「歩く訓練をしているときは一歩一歩が『家に近づく道』、エアロバイクの一こぎ一こぎが『仕事につながる道』という思いでした。とにかく早く家に帰りたかったんです」
懸命のリハビリが奏功し、当初は12月と思われていた退院が8月になった。一生車椅子かもしれないと言われたが、今は歩けるようにも。そんな自身の体験や思いをブログやSNSなどで発信している。
「病気を公表したことで、同じ病気の方の体験談や応援メッセージをたくさんいただき、大きな励みになりました。だから今度は、僕が支えられる側から支える側になりたい。そんな思いで発信しています」
とはいえ、ときには心ない言葉を投げつけられることもある。
「そういうときは非表示や削除をしてもらっています。だって時間がもったいないから。特に病気になってからは、無駄な時間は費やしたくないと思っているんです。だから皆さんも、ネガティブな言葉や心を傷つけられるような言葉はスルーしてもいい。もっと楽しく豊かになれることに時間を使いましょう!」
「ネガティブな言葉はスルーしていい!」
病気になったからこそ「時間の大切さがわかるようになった」と佐藤さん。「1日は24時間しかありません。人生の残り時間を、自分が嫌な気持ちになることに10分でも20分でも費やすのはもったいないと思います」
PROFILE
佐藤弘道 タレント、体操インストラクター
さとう・ひろみち●1968年、東京都生まれ。
93年よりNHK Eテレ「おかあさんといっしょ」第10代体操のお兄さんを務め、「ひろみちお兄さん」として親しまれる。
2002年には子どもと指導者のためのスポーツクラブを立ち上げ、親子体操教室や講演会など幅広く活躍。
24年6月、脊髄梗塞による下半身マヒを公表、現在もリハビリ中。
取材・文/本木頼子
※この記事は「ゆうゆう」2025年2月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
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