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【べらぼう】瀬川(小芝風花)の身請け、うつせみ(小野花梨)の足抜け…吉原の女郎の境遇とは?

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鷹橋 忍

【べらぼう】瀬川(小芝風花)の身請け、うつせみ(小野花梨)の足抜け…吉原の女郎の境遇とは?

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第9回より ©️NHK

横浜流星さんが主人公・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/蔦重)を演じる、2025年NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめものがたり)〜」。当時の文化や時代背景、登場人物について、戦国武将や城、水軍などに詳しい作家・鷹橋 忍さんが深掘りし、ドラマを見るのがもっと楽しくなるような記事を隔週でお届けします。今回のテーマは、吉原の女郎の境遇についてです。

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NHK大河ドラマ『べらぼう』第9回「玉菊燈籠恋の地獄」と第10回「『青楼美人』の見る夢は」が放送されました。第9回では井之脇海さんが演じる小田新之助と、小野花梨さんが演じる松葉屋の女郎・うつせみが「足抜け」(吉原から逃亡する)を決行するも、失敗に終わりました。

吉原に連れ戻され、折檻されるうつせみの姿や、水野美紀さんが演じる松葉屋の女将・いねが語る、足抜けした女郎を待ち受ける痛ましい運命に、衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか。

今回は、吉原の女郎の境遇を中心に取り上げたいと思います。

女郎は「親孝行者」と思われていた

ほとんどの吉原の女郎は、身売りされた女性だといいます。困窮した家族が前借金し、その家族のひとりである女性が遊女(女郎)となって借金を返す仕組みで(田中優子『遊廓と日本人』)、証文も取り交わしました。

実質的な人身売買といわれ、全国から女性が集められました。家族が直に「女郎屋」(妓楼、遊女屋、傾城屋とも)に売る場合もありましたが、多くは、女郎屋などへ女性を斡旋することを業にする「女衒」(ぜげん)が仲介しました。女衒の中には、各地から人さらいに近い方法で女性を連れてくる者もいたといいます。

いずれにせよ女郎となれば、借金の返済が終わる、もしくは契約した「年季」(年限)が明ける、または、客が女郎の抱えた借金を肩代わりし妻や妾とする「身請け」されるまで、遊廓で働かねばなりませんでした。

当時の人々は、女郎を「自分を犠牲にして、家族を救った親孝行者」とみており、差別されることはほとんどなかったといいます(安藤優一郎監修『江戸の色町 遊女と吉原の歴史 江戸文化から見た吉原と遊女の生活』)。

「苦界(くがい)十年」の言葉どおり…

「苦界(女郎の辛い境遇)十年」といわれるように、女郎の年季は10年が原則だったとされます。ただし、女郎として働きはじめてから10年という意味なので、幼い頃に身売りされ、「禿」(かむろ/女郎見習い)となった女性は、もっと長い月日を吉原で過ごすことになります。

女郎の労働条件は、よいとはとてもいえません。「揚代」(あげだい/客が女郎と遊んだ代金)はすべて「楼主」(女郎屋の主人)の手に渡るうえ、衣装やヘアメイク、食費、住居費、調度品、医療費など、諸費用は女郎持ちでした。他にもさまざまな出費を強いられるため、借金を返すどころか、さらなる借金を背負う女郎も少なくなかったとされます。

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第10回より ©️NHK

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