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人生後半戦の『ターニングポイント』を前向きに!

"訳アリ”ヒロインは草笛光子さんそのもの!?女優人生を支えた「母との合言葉」とは【草笛光子さんのターニングポイント#1】

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藤岡眞澄

91歳を迎えた女優 草笛光子さんの最新作は、映画『アンジーのBARで逢いましょう』。2025年4月4日公開です。突然町にやってきて周りを次々に巻き込んでいく謎めいたヒロイン アンジーを、どう演じたのでしょう。草笛さんの女優人生を支えているのは? 草笛光子さんのインタビューを2回に分けてお届けします。

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「こういう“訳アリ”の役はやってみたかったので」

第48回日本アカデミー賞授賞式(2025年3月14日)。その華やかなレッドカーペットには、90歳にして初の単独主演映画『九十歳。何がめでたい』で優秀主演女優賞を受賞し、純白のドレスを纏った草笛光子さんの姿があった。

91歳のいま、女優として円熟のとき。そんな草笛さんが最新作として主演を務めた作品が『アンジーのBARで逢いましょう』だ。

物語は、グレイヘアにロングコートを羽織った一人の女性が、布製バッグ一つを手にトンネルを抜け、とある町にたどり着くところから始まる。ふと目に止まったのが、廃屋寸前の建物。そのとき一陣の風が吹き、自らを「アンジー」と名乗り、「お尋ね者」と嘯くミステリアスな女性は、その物件を借りてBARを開く……。

「最初はよくわからなかったんですよ。ただ西部劇の様だなと思いました。流れ者が町にやってきてひと騒動みたいな話でしょ、でも今の時代にこれをやるのは面白いなと思いました。

どこからともなくやって来て、いろんな人を巻き込んで、自由気ままに生きているアンジーが、私は好きですね。

実は詐欺師っていうのもこれまで演じたことがなかったですし、こういう“訳アリ”の役はやってみたかったので、死ぬ前にできてよかったです」

この答えひとつとっても、人が好き、好奇心旺盛な草笛さんの素顔がのぞく。それは、アンジーも同じこと。そして、アンジーはこれでなくちゃ、と思わせてくれる深紅の衣装も縦ロールの髪型も、草笛さんに馴染んで素敵だ。

「素敵でしたか? それならよかった。映画の企画書を持って、プロデューサーがいらして、『草笛さんで映画を撮りたい、天願大介さん(草笛さん出演映画『デンデラ』監督)のオリジナル脚本で行きましょう』と揚々とおっしゃって。私でいいのかしらと思いました。

加えて、『アンジーは草笛さんそのものなんです』とおっしゃったんです。私そのものがお尋ね者とは失礼だわ、と思いながらも、自由にそのまま演じてくださいと言われました。

でも、女優にとって『そのまんま』というのがどれだけ怖いことか。私はいただいた役を『さて、どうしようか』とあれこれ考えて、悩んで、悩んで、悩みぬいて、自分の身体を通して役を作る方でしたから『そのまんま』の方が難しい。

しかも、今回のアンジーは衣装も1着で、素性も全く分からず、人間なのかどうかすらわからないでしょ、自分でもよくわからないままその場その場で感じた感情を出しただけ。言われた通り『そのまんま』で演じました」

アンジーはこれでなくちゃ、と思わせてくれる深紅の衣装と縦ロールの髪型。

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