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【おむすび】翔也(佐野勇斗)に聞いてみたい。「米田家って何なん?」と思ったこと、なかっただろうか

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田幸和歌子

【おむすび】翔也(佐野勇斗)に聞いてみたい。「米田家って何なん?」と思ったこと、なかっただろうか

「おむすび」第117回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。平成青春グラフィティ「おむすび」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

▼前回はこちら▼

ある意味リアルな描写なのか!?【おむすび】もっと知りたかったのは描かれない苦労や努力だ

米田家に代々受け継がれる2つのこと

NHK連続テレビ小説『おむすび』のサブタイトルとして、何度となく登場した「何なん?」という問いかけ。第2週の「ギャルって何なん?」から始まり、「夢って何なん?」「就職って何なん?」「結婚って何なん?」「母親って何なん?」など、これらはヒロイン米田結(橋本環奈)の人生の転機を中心に、登場人物たちがそれぞれ向き合い考え成長するときに登場することが多い問いかけだ。

第24週で掲げられたサブタイトルは「家族って何なん?」だ。ヒロインの家族といえば、言うまでもなく米田家だが、このドラマでことあるごとに出てくる米田家を語るうえで欠かせない属性が序盤よりずっと出てくる「米田家の呪い」である。

本稿でも何度も触れてきたが、米田家の呪いとは、「困っている人を見ると放っておけない」という、人助けの精神が代々受け継がれてきたことを指す。これはヒロイン結はもちろん、結の祖父・永吉(松平健)、息子の聖人(北村有起哉)、長女の歩(仲里依紗)に脈々と受け継がれてきたものだ。

ちなみに、もうひとつの縦軸として描かれた「おいしいもん食べたら悲しいことちょっとは忘れられる」は、祖母の佳代(宮崎美子)から受け継がれてきた教えで、両方の教えを受け継ぎ大切なものを伝えていくというのが米田結というヒロインだ。

「おむすび」第119回より(C)NHK

「食べり」の連呼がだんだん「圧」のように

さてこの24週だが、リリー・フランキーの語りによって例によって時間がスキップ、令和5(2023)年が舞台となる。コロナ禍も第1波を乗り切ったあとは「その後も徹底した感染対策を続けながら」日常が戻ってきた。9年目となる結は課長補佐となり、翔也(佐野勇斗)は無事資格を取得し理容師に、歩は動画配信をきっかけにさらなるインフルエンサーとして活躍、娘の花(新津ちせ)は中学生に成長した。

このドラマの大きなテーマであるのが「食」である。食べることを通じて人と人とをむすんでいく。とても大切なことだ。しかし、これまでもよく指摘されてきたが、そのために病院勤務の管理栄養士の描き方の難しさも感じる部分が多々みられた。今回新たに結が担当するのは、栄養失調状態で病院に運ばれてきた身元不明の少女・詩(大島美優)だ。

生きる希望を見出せない詩の気持ちに寄り添い、少しでも元気になってもらおうと結は詩になんとか食べてもらって心と体の健康を取り戻せるよう奮闘する。これはもう先ほど記したように病院勤務管理栄養士の難しさそのままだが、病院で結が担当する入院患者は歴代食欲がない→じゃあなんとか食べてもらおうの繰り返しで、今回も同じパターンだった。

管理栄養士の仕事は、食欲不振を解決するだけでなく、さまざまなものがあるはずだ。ゲストキャラ的に登場する入院患者と心を通わせていく過程を描くということと栄養・食をからめることでどうしてもやりとり的にこうなってしまう流れになるのは仕方ないことだっただろうか。

しかも、食べることをうながす「食べり」の連呼がだんだん「圧」のようになってきているのも、相手の「悲しいこと」に寄り添えてない(それがまた成長のきっかけにつながることがあるのだが)のも気になるところだ。

「おむすび」第118回より(C)NHK

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