書店の在庫が蒸発した!文庫ランキング第1位の昭和の小説 有吉佐和子『青い壺』が50代女性の心に響く理由とは?
「有吉さんしかいない」説得力をもった描写とは
ちなみに、山口さんのお気に入りは、「ホロホロ鳥」が登場する第7話と第8話だそう。灯火管制の下、外交官の夫はジャバ更紗のディナージャケット、自分はイブニングドレスにカルティエのイヤリングでドレスアップし、豪華なテーブルウェアをセッティングしてホロホロ鳥に見立てた芋料理をいただいた——。と亡き夫との思い出を回想する姑。そんな上流出身の姑を支え、看取った妻をねぎらうため、夫は贅沢の象徴だった「ホロホロ鳥」を食べさせようとフランス料理店に誘い、妻は姑から譲り受けた宝石を身に着けて出かける。束の間の幸せな時間。そして、帰宅したとき、青い壺は……。
「豊かな時代があれば、心の中から楽しくなれる——。贅沢の意味をこれほどの説得力を持って言ってくれる人は、有吉さんしかいない、と思いました」(山口さん)
そんな山口さんは最近、銀座の文具店で見かけてずっと気になっていたけれど、値段に躊躇して手が出なかった「ホロホロ鳥」のオブジェを購入したという。これも1つの「贅沢の意味」なのかもしれない。
ちなみに、有吉佐和子の没後、和歌山市に寄託された茶道具など385点の中に、『青い壺』に登場する壺と同じ形の「青磁筒花入」があることがわかったという。
だが、「壺」は名もなき陶芸家が作った、名もなき壺だからこそ、変幻自在に流転し、「どんな形や色の壺だろう?」と読み手の想像力を掻き立てる。だから、その壺に想いを馳せつつ、見ないでおこうと思う。
【プロフィール】
有吉佐和子(ありよし・さわこ)
昭和6(1931)年、和歌山生まれ。
昭和31(1956)年に『地唄』で文壇デビュー。
紀州を舞台にした『紀ノ川』『有田川』『日高川』三部作、世界初の全身麻酔手術を成功させた医者の嫁姑問題を描く『華岡青洲の妻』(女流文学賞)、老人介護問題に先鞭をつけ当時の流行語にもなった『恍惚の人』、公害問題を取り上げた『複合汚染』など意欲作を次々に発表し人気作家の地位を確固たるものにする。多彩かつ骨太、エンターテインメント性の高い傑作の数々を生み出した。
昭和59(1984)年8月逝去。
※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです。

青い壺
有吉佐和子著
文春文庫
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