18年前に離婚した妻を自宅に迎え入れて、長女とともに看取る…元夫の葛藤と“責任”とは?【宮川一朗太さんのターニングポイント#4】
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今年5月に放送された「徹子の部屋」(テレビ朝日)で宮川一朗太さんが打ち明けた、末期がんの元奥様の看取り。一度は離婚した元妻への対応が話題になりました。第4回の最終回では、元妻の看取りの経験から宮川さんが考えた人生観や家族の絆、そしてご自分のこれからについて、教えていただきましょう。
▼前回はこちら▼
>>15年の結婚生活にピリオド。【宮川一朗太さんのターニングポイント#3】シングルファザーとして娘2人と交わした約束とは?離婚後も元妻の誕生日を娘たちと祝うことは続いていて
——元奥様は2年前に亡くなられたそうですが、離婚後もコンタクトはあったのですか?
やはり娘たちは母親が必要な時期でしたから、時折元妻に会っていましたね。特にそれを止める必要もなかったですし、僕も彼女の誕生日をいっしょに祝ったりもしていました。
数年はそのような感じで、しばらくして彼女が南のほうへ引っ越したので、それで会うこともなくなっていたんですが……がんになったと。
一度手術をして、その2年後に転移がわかって、そこからはもう末期ということで一気に病状が進み、娘たちも「東京に転院して、できる治療を受けさせたほうが良い」と。そこで東京の病院に入院したんですね。そんなに長くないかもしれないと言われて、本人も「もう病院にはいたくない、家に帰りたい」と、弱った体で繰り返し言っていたんです。
——その時点で離婚されて何年経っていたのですか?
18年です。18年も経つと、あの頃なんで喧嘩していたんだろう——なんて、記憶も薄くなりますね。
——それでも、別れたパートナーを迎え入れるというのは、なかなかできることではないと思うのですが。
そうですよね。一度は別れた妻を自宅に迎え入れて、おそらく期間は短いかもしれないけれど一緒に住む、というのはなかなか複雑な心境でした。
ただ、長時間の移動にはもう耐えられない、病院から近いところがいい、となると、うちしかない。やっぱりこれは葛藤があったんですけどね、本当に彼女を受け入れるのか、そういう状況なら仕方がない、子どもたちも望んでいるし、彼女も病院から出たいというのが希望だ。何日も子どもたちと議論しました。うちに来ても何もできるわけではないですから。
病院から出ることが希望であるなら、最後に願いを叶えられるのも、僕の務めなのかな、というのもありまして。元妻の身の回りの世話は娘たちがすると言っていたことで、受け入れることにしました。
今になって考えてみると、僕の一つの責任の取り方だったのかなあという気もします。
離婚してもう18年ぐらい経つわけですよ。離婚した時はいろんなことがあって、彼女には彼女の言い分が、僕には僕の言い分が、お互いの言い分があって、それが結局埋まらずに別れることになったわけですけど。ここまでの流れを俯瞰してよく考えたら、そこに至るまでのもっと手前の段階で、やっぱり僕にも責任の一端があったんだろうなと思うようになったんです。あのとき離婚しなければ、彼女の人生も違う流れや展開があったんじゃないかなと。
おそらくそれほどもう長くないのであれば、短い時間かもしれないけれども、ここは優しく、優しい元夫で——みたいなね。
——大変な覚悟で元奥様を迎え入れられたんですね。
元妻を迎えたのが2023年の3月で、その半年後に遠方にいる次女に子どもが生まれる予定だったんです。元妻も次女が帰省して、初孫を見せてくれるのを楽しみにしていたので、そういうときって奇跡が起きて元気になったり、そんなこともあるじゃないですか。だから、この不思議な共同生活が長引く可能性もあるかな、でもまあ長期戦でもいいよ、どうにかしてやろうじゃないかなんて思っていたら、結局、家に迎えた翌日、彼女は旅立ちました。
家に来てからの彼女は、もう目は見えないし耳も聞こえなくなっていたので、どこまで理解していたかわかりませんが、体の位置を変えたりしたときの手が僕や娘だと、ここは病院じゃないと感じて安心したのかもしれません。
