18年前に離婚した妻を自宅に迎え入れて、長女とともに看取る…元夫の葛藤と“責任”とは?【宮川一朗太さんのターニングポイント#4】
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——最期の日はどのように迎えられたのですか?
翌朝、もうダメかもしれないとなったとき、実は次女が駆けつけている最中で。僕たちは「もうすぐ着くからね、がんばれ」なんて言ってしまうんですけども、付き添ってくれているプロの方は、元妻の様子を見て「もう、脳が休みたいって、言っているようですね」とおっしゃるんです。
そうか、もう、脳が休みたいんだったら、今まで頑張ってきたんだから、もう、いいんだよ、ゆっくり休んでいいんだよ、という気持ちになりました。そこからは1回の呼吸がだんだん間隔が広がり、弱くなり、最後はふーっと息を吐いて旅立ちました。
元妻亡きあと、子どもたちのために決めたこと
——元奥様を自宅で看取られて、心境の変化はありましたか?
元妻を最後に自宅に迎え入れて看取ったことは、その後周りに話したときにはすごく驚かれて、逆に驚いています。
次女は間に合わなかったものの、次女のことを話しながら、僕と長女と元妻で3人一緒にいて、なんだか家族が戻ったような感覚もあり、温かい、家族的雰囲気の中で送り出せたことは後悔していません。
ただ元妻は、病院で勧められた治療の全てを受けたわけでなく、自分で断ったものもあったそうなんです。そうなると、残された者たちは「あの治療をしていれば」とか「なんとか説得できていたら」とやはり色々考えてしまいますよね。
だから自分はこれから、ちゃんと健康に気をつけていこうと。子どもたちに悔いを与えないようにしようと、決めました。それが先に旅立つ者の責務なんですよね。
——そして最近、始められたことがあるそうですね。
演技指導の塾「いち塾」を始めました。
これは、子どもから大人まで、お芝居をしてみたいという人に広く参加いただいています。最近50代の方が立て続けに入られたんです。人生は一度きりなので、貪欲に楽しみたいと、今までとまったく違う演技の世界に飛び込んで来てくださるのが本当に嬉しいですね。塾長として、自分がやってきたことを人に教える楽しさを実感しています。
親父が亡くなった58歳を越えて、もうすぐ僕も還暦を迎えます。親父の見られなかった60代の世界を見てみたい、芝居はもちろん、色々なことに挑戦していきたいと思っています。
宮川一朗太さんのターニングポイント④
病院でなく家で過ごしたいと言う病床の元奥様を自宅に迎え入れ、看取り。その経験から、健康に気をつけること、子どもたちに悔いを残させない生き方を目指すようになった。
宮川一朗太さん プロフィール
みやかわいちろうた⚫️1966年3月25日生まれ。早稲田大学中退。漢字検定準一級。1983年映画『家族ゲーム』で映画デビュー、1984年日本アカデミー賞、優秀新人賞を受賞。『青い瞳の聖ライフ』『ヤヌスの鏡』『一千兆円の身代金』『半沢直樹』『光る君へ』など多くのドラマに出演。映画では1987年『ゴキブリたちの黄昏』、1988年『独身アパート どくだみ荘』、2015年『ソロモンの偽証』など。趣味は競馬 、麻雀、パソコン、映画鑑賞。俳優教育にも力を注ぎ、2021年より「いち塾」主宰。趣味は競馬・麻雀・映画鑑賞。
いち塾 https://actschool-ichirota.com/instluctor/
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