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破天荒な母に振り回される四姉妹の看取りとは?尾崎英子さんの初エッセイ『母の旅立ち』より

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ゆうゆうtime編集部

「母が倒れた」——その知らせが届いたのは、作家の尾崎英子さんがシンガポールに滞在していた時のことでした。がんの脳転移という重い診断を受けた母は、なんと標準治療を拒否。家族は突然の現実に向き合うことになります。破天荒で自由奔放な母と、彼女に振り回されながらも深い絆で結ばれた四姉妹。そんな母の旅立ちまでの数ヶ月を描いた、涙と笑いと驚きに満ちた書籍『母の旅立ち』から一部抜粋と要約してお届けします(前編)。

母、倒れる——その日まで二十日

「脳転移?」
シンガポールで観光中だった著者に、姉から突然の電話が入りました。

「お母さんが倒れて病院に搬送されたんよ。MRIの結果、がん性髄膜炎やった」
「原発の乳がんが脳にまで転移していて……」

母は標準治療を拒否し、放射線療法も受けずに退院するというのです。
「お母さん、また拒否ってるんか……」
四女である尾崎さんは電話越しに、母の頑なな姿勢を思い出しました。

「がんってな、準備する時間を与えてくれるという面ではけっして悪い病気ではないんよ」
医師である次女・ようこさんは、冷静にそう語ります。死に向き合う覚悟と、家族の心構えを促す言葉でした。

四姉妹、再び結集する——母の病気がもたらしたもの

「わたし、帰らなくちゃならなくなったわ」
母ががんを告げた時の言葉は、まるで前世の記憶に導かれるようでした。母は「シリウス星から来た」と信じていたそうです。

「うちの母はたいへんな変わり者で、なかなかのトラブルメーカーだった」
母の金銭トラブルは数知れず。孫の留学費用300万円を「友達」に貸し、返済されずに雲隠れされたこともありました。新興宗教への多額のお布施、エステサロンの倒産による2億円の借金——なんとそれらを父がすべてを背負って返済したのです。

「人が人を変えることはできない。自分自身が変わりたいと思わない限り、変わらない」
母は反省しない人でした。そんな母に振り回されながらも、長女・たつこさんはいつも母を見捨てませんでした。

「お母さん、ステージⅣのがんなんやって」
年明け、三女・あきこさんが父から聞いた衝撃の事実。ようやく四姉妹全員が母の病状を知ることになります。

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