記事ランキング マンガ 連載・特集

【吉本ばななさん】親しい人の死や、一人になっていく孤独感。「楽しい」と思えなくなりそうなとき、できることは?

公開日

更新日

ゆうゆう編集部

デビュー作『キッチン』が大ベストセラーになって37年。子どもを産み育て、愛する父と母を見送り、自身も60代に。読者の心のやわらかい部分に寄り添う物語をずっと描き続けている吉本ばななさんに、これからを楽しく生きる考え方を聞きました。

▼前の記事はこちら▼

>>「認知症の親の介護で疲れ切り、逃げ出したい…」【吉本ばななさん】ならどう考えて乗り越える?

PROFILE
吉本ばななさん 

よしもと・ばなな●1964年東京生まれ。
日本大学藝術学部文芸学科卒業。
87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。
88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞、22年『ミトンとふびん』で谷崎潤一郎賞を受賞。
著作は30カ国以上で翻訳出版され海外での受賞も多数。
近著に『下町サイキック』『ヨシモトオノ』など。
noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

親しい人の死や、一人になっていく孤独感。「楽しい」と思えなくなりそうなとき、できることは?

私たちは誰だって一人で生きて死ぬのです

本当に自由に楽しく生きたいのであれば、生まれるときも死ぬときも一人なのだということを、一度きちんと覚悟しなくてはいけないのだと思います。「自分は死ぬのだ」ということを、真芯(まっしん)でとらえること。目をそらしてごまかそうとすると、中途半端に苦しくなってしまうのではないでしょうか。

私たちは一人で生まれて、一人で死にます。

覚えてはいないけれど、生まれたときは一人でしたよね。何もわからない世界にポンと生まれて、「おなかがすいた」「おむつがぬれた」って全力で泣いて訴えながら生きてきました。

「死」も同じです。病気になるのも一人、お医者さんに「余命あと1カ月」って言われて、死と向き合うのも一人。ものすごく孤独で怖いと思うんですけれど、しばらくは泣いていても、少しすると立ち直って、できることをしようとするはずです。ごまかしようがない死という現実を、ちゃんと見るようになるんです、私たちは。

怖いなぁって思いますよね。でも振り返れば、たった一人で悩み抜いて結論を出したことは誰にでもあるはず。そのときの、暗いような、強いような、あの気持ちを思い出せれば、「自分は大丈夫」と思えるかもしれません。

それを私に教えてくれたのは、今まで飼ってきた動物たちです。子どもの頃からずっと動物を飼っていて、今は犬2匹と猫とカメがいます。自分の死を受け入れることに関して、彼らは本当にえらいですよ。ムダに大騒ぎすることなく死を受け入れて、一人で死んでいく。その姿を見せてもらうたびに、死に方を教わっていると思います。ありがたいです。

そんな話をすると「もう死から目をそらせない年齢になったんですね」って言われるのですが、年齢ではありません。私は子どもの頃からずっと、生や死について考えていました。生や死はいつも身近にあるもの。そこから目をそらしても、いいことなんて何もないのです。

自由に楽しく生きたいのであれば
生まれるときも死ぬときも一人なのだと
覚悟しなくてはいけない

画面トップへ移動