「認知症の親の介護で疲れ切り、逃げ出したい…」【吉本ばななさん】ならどう考えて乗り越える?
デビュー作『キッチン』が大ベストセラーになって37年。子どもを産み育て、愛する父と母を見送り、自身も60代に。読者の心のやわらかい部分に寄り添う物語をずっと描き続けている吉本ばななさんに、これからを楽しく生きる考え方を聞きました。
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PROFILE
吉本ばななさん
よしもと・ばなな●1964年東京生まれ。
日本大学藝術学部文芸学科卒業。
87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。
88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞、22年『ミトンとふびん』で谷崎潤一郎賞を受賞。
著作は30カ国以上で翻訳出版され海外での受賞も多数。
近著に『下町サイキック』『ヨシモトオノ』など。
noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。
悩みや不安をかかえる『ゆうゆう』世代。ばななさんなら、どう考えて乗り越えますか?
Q 年齢とともに物事をネガティブに考えることが増え、悲しくなります
A ネガティブは自分に対する冷静さ。悪いことじゃない
ネガティブになったのは年齢のせいでしょうか。もともとネガティブだったのに、若い頃は勢いがあったから気づかなかっただけで、ネガティブがあなたの本来の姿なんです、きっと。
でもネガティブって悪くないです。自分に対して冷静さを保てるし、ポジティブなだけの人間は信用されません。ちなみに私はネガ・ポジがきっちり半々。そのくらいがベストバランスだと思います。ちょっと意識してポジティブを入れる、くらいでいいのではないでしょうか。
Q 新しいことがおっくうになっています。一歩踏み出すためにはどうしたら?
A ささやかでいいから「いつもと違うこと」を何か一つやろう
できるだけ小さいことから始めてみては? 電車に乗って降りたことのない駅で降りるとか、いつもの饅頭じゃなくて隣町の和菓子屋の饅頭を買ってみるとか。「いつものほうがおいしい」と思ったら、もう買わなければいいだけのこと。失敗ではありません。
たいていの場合、深く考えず「やってみちゃった!」って感じのほうがうまくいくもの。ただし、結婚するというときだけは勢いは禁物。この年齢での結婚は、遺産と介護でモメがちですから。
Q 認知症の親の介護で疲れ切り、逃げ出したくなっています
A 一人でかかえ込まず借りられる手は何でも借りましょう
親の介護は本当に大変です。なるべく行政や近親者の手を借りつつ、自分の心身の健康を保ってください。親子だからイラつくこともあるので、他人にどんどん入ってもらったほうがいい。「もう十分利用している」と思っているかもしれませんが、まだ何かあるかもしれません。情報を集め、借りられる手は全部借りて、疲れた心と体を休めてください。
親の介護は永遠には続きません。その先の自分の人生のためにも、どうか燃え尽きないように。
