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【あんぱん】“ようやく”思いを通じ合わせた二人。寛(竹野内豊)の言葉「別々の道を歩んでいても、いつか交わる日がくる」が現実に

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田幸和歌子

【あんぱん】“ようやく”思いを通じ合わせた二人。寛(竹野内豊)の言葉「別々の道を歩んでいても、いつか交わる日がくる」が現実に

「あんぱん」第85回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。漫画家のやなせたかしさんと妻の小松暢さんをモデルに、激動の時代を生き抜く夫婦の姿を描く物語「あんぱん」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

▼前回はこちら▼

>>「あんぱん」ヒロインの前にどんどんレールが敷かれていく【朝ドラ】らしさ。そのスピード感に驚かされた

古い少女漫画のような、周囲の後押しが

NHK連続テレビ小説『あんぱん』は、『アンパンマン』の作者・やなせたかしとその妻で小松暢をモデルとした作品であることは、ほぼすべての視聴者が知っていることだろう。史実と創作を交えながら二人の距離も縮まったり離れたりして進んできた本作だが、第17週の「あなたの二倍あなたを好き」でその距離はいよいよぐっと近づいた。

前週からの流れで、高知新報を退社し代議士・薪鉄子(戸田恵子)のもとで東京で働くこととなった、ヒロインのぶ(今田美桜)。さっき「ぐっと近づいた」と書いたばかりだが、ここでいったん嵩(北村匠海)との物理的な距離はふたたび離れてしまうことになる。

「やっぱりすごいな、のぶちゃんは」
賞賛しながらも俺もいつかは、と言う嵩はいつも通り控えめだ。

先に行って待ってると返すのぶ。のぶと嵩のこの関係性は昔からずっと変わらない。子供のころから足の速さが取り柄だったのぶは先に走っていってしまう。だけど置いていかず待っていると言ってくれる。このあたりは、元夫の次郎(中島歩)に「のぶさんは足が早いき、すぐ追いつきます」と優しく言われたこととの逆の位置関係、追いかけるのではなく、ゆっくり歩む嵩を待つというのは、のぶの嵩に向けた視線を感じることができる。のぶと嵩はその歩み方が一番しっくりくるのだろう。

いっぽうで、人の恋路に夢中になるのは本人よりも周辺だったりすることはあるあるだ。

かつてのぶが所属し、嵩が働く『月刊くじら』編集部の面々も、
「このまま気持ちを伝えんでええがですか?」(琴子/鳴海唯)
「柳井さんが彼女のことを好きながは、高知新報の人間やったら、というか、高知中の人間が知っちょりますき」(岩清水/倉悠貴)
と、まるで古い少女漫画のような後押しをして嵩をせきたてる。

当然、すべてマイペースの嵩はそこには乗っからない。しかし、嵩の心の底には変わりのない思いはずっと燃え続けている。

ハンドバッグは8年も前に突き返されていたのだが…

翌朝、嵩がのぶとメイコ(原菜乃華)が暮らす家に駆け込んできた。手にしているのは、かつてのぶにプレゼントしようとしたものの、間と渡し方が悪すぎて拒絶されたあの赤いハンドバッグだ。しかしすでにのぶは東京へ発ったあとだった。
「嵩さんはどういていっぺんもお姉ちゃんに気持ちをぶつけんがですか?」
と、蘭子(河合優実)に言われ、「僕の気持ちはどうでもいい」という嵩が返したところ、
「8年も前に突き返されたハンドバッグを走って渡しにくるって、そういうことでしょ!」
と直球で返されたのはさすがに笑ってしまった。

【あんぱん】“ようやく”思いを通じ合わせた二人。寛(竹野内豊)の言葉「別々の道を歩んでいても、いつか交わる日がくる」が現実に(画像2)

「あんぱん」第81回より(C)NHK

【あんぱん】“ようやく”思いを通じ合わせた二人。寛(竹野内豊)の言葉「別々の道を歩んでいても、いつか交わる日がくる」が現実に(画像3)

「あんぱん」第82回より(C)NHK

いっぽう、「先に待ってる」のぶはといえば、鉄子のもと、戦災孤児の話を聞き、それを鉄子の政策に生かすという仕事を命じられ、記者時代と同じように孤児たちの話を聞き、鉄子が救おうとする弱者たちの実態に直面する。

そんなのぶが子供たちのためにやってみたこと、それは満足な教育を受けられていない戦災孤児たちに勉強を教えることだった。もと教師だったのぶらしい行動である。
「ガード下に変わりもんがもう1人増えたねぇ」
と他人事のようにつぶやく鉄子は少しうれしそうだ。おかげで子供たちにも好評のようだ。

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