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LiLiCo「大人のたしなみともいえる作品です」イタリア映画『美しい夏』が描く青春と愛、そして残酷さに酔いしれる

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LiLiCo

TBS「王様のブランチ」の映画コーナーを担当し、映画コメンテーターとしても人気を集めるLiLiCoさんが、おすすめ映画を紹介していきます。今回は『美しい夏』です。

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青春の輝きと残酷さを描いた イタリア文学の最高峰を待望の映画化

皆さん、映画楽しんでいますか? 映画のジャンルは多岐にわたります。そして、人の考え方や人生を変える力をもっています。だから、映画のビジュアルやあらすじを見て、「自分好みじゃないな」と思っても、観てほしいんです。観る前から拒絶するなんてもったいない。新しい扉を開ける勇気をもてば、絶対自分の糧になると思うから。

今月もそんな一本をご紹介! それがイタリア映画、『美しい夏』です。タイトルからして今の時期にぴったりでしょ。舞台は戦争の影が忍び寄る1938年のイタリア、トリノ。ちょっぴりシャイで思春期まっただ中のジーニアが、画家のモデルとして生計を立てる自由奔放なアメーリアに出会うところから物語は始まります。ガーデンでのパーティー、音楽が流れる中でワイン片手に踊り、キスし、キャンドルの灯の中で語り合う……。まず主人公の二人が美しい! そして、アメーリアによって新たな扉が開かれ、迷いながらも少しずつ自分を変え、大人への階段を上るジーニア。その成長の過程が本当に繊細に描かれているの。ここ最近、こんなにも瑞々しく、青春をリアルに丁寧に描いた映画があったでしょうか。お見事!って拍手を贈りたい気分よ。

個人的にはアメーリアの美しさに心奪われました。「なんて素敵な女優さん」と思ったら、モニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセルの娘さんだったの! それはショービズの世界が放っておかないですよね。ディオールのアンバサダーも務め、本作がスクリーンデビューの新星は、今後も注目です。「愛」って人間がもつ美しい感情だけど、ときに残酷で人を不幸にすることもある。自覚のないまま誰かを傷つけることもあるし、華やかな世界が人を狂わせることもある。自分を失わず、すべてを手に入れることって本当に難しいよね。季節は美しく過ぎ、登場人物の心の動きもそれに伴い変化していく。不穏な時代背景、シンプルだけど素敵なインテリアやファッション、官能的でありながら上品な映像。その中でジーニアとアメーリアの関係がどうなっていくのか……続きはぜひ映画館で。暑い夏の日に観たい、大人のたしなみともいえる作品です。

『美しい夏』

監督・脚本/ラウラ・ルケッティ
出演/イーレ・ヴィアネッロ、ディーヴァ・カッセル 他
YEBISU GARDEN CINEMA、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺 他 全国公開中(イタリア 配給/ミモザフィルムズ)
© 2023 Kino Produzioni, 9.99 Films

※この記事は「ゆうゆう」2025年9月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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