【シニアの住まい選び】77歳、作家・久田恵さんの体験談「地方のサ高住から再び東京へ」
風の音に魅せられてサ高住に移住するも……
そこから十数年、久田さんはここで暮らしてきた。その間に母をホームで看取り、やがて父も92歳で亡くなった。その後、家には親戚が移り住むことになったため、久田さんは再び近所のマンションで一人住まいに。
そして2018年、70歳のときに、栃木県那須市にあるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「ゆいま~る那須」への入居を決めて移り住んだのだ。
「当時、やはり全国の介護施設を取材していて、そこもその取材の一環で訪れたんです。ゲストルームに泊まらせてもらったら、風がピューピュー音を立てて鳴るんですよ。『あ、風が泣いている』と思って。私、子どもの頃、北海道で育ったから、そのときと同じ音だと思ったのね。それで気に入っちゃって、『ここに入りたいんですけど』とお願いしたら『どうぞどうぞ』と。あっという間に決まりました」
新幹線の最寄り駅から車で15分かかるが、自然に囲まれた場所に立つ天然無垢の木の温もりのある住宅で、全国から個性的な人たちが集まって、その暮らしは楽しかったという。
「人形劇を上演したり、2000㎡の原っぱを1万円で借りて、そこにガーデンハウスやコーヒースタンドを建てて、いろいろなイベントをやったり、とても楽しかったんです。朝起きて空を見たら、きれいな山が迫っていて、景色もいい。でも75歳で自動車免許を返納したら、行動範囲が限られてしまって。やはり車がないと不便な土地であることは確かなんですね。私はまだ仕事もしていたので、そのために2週間に一度のペースで東京に行っていたのですが、行くたびに東京の便利さをより実感するようになってきたんです。駅も近くにあるし、商店街も映画館もレストランもコンビニも歩いて行ける範囲にある。東京って実は高齢者にはとても住みやすい環境であることに改めて気づきました」
