【シニアの住まい選び】77歳、作家・久田恵さんの体験談「地方のサ高住から再び東京へ」
要介護状態になったら老人ホームに入る
ちょうどその頃、自宅に住んでいた親戚が引っ越したこともあり、かつて久田さんが父と暮らしたわが家は空き家状態になっていた。サ高住の家賃は月額3万円ほどで、決して高額とはいえなかったが、ずっとフリーランスで働いてきて年金も多くはもらえないことを考えると、家賃ゼロの自宅に戻ってくることは、さまざまな面で最良の選択のような気がした。そこで、24年の2月、76歳のときに、6年ぶりにここ東京の自宅に戻ったというわけだ。一人暮らしには広すぎるが、休日には息子や孫たちが入れ代わり立ち代わり訪れて、にぎやかだ。
「年をとればとるほど、都市で暮らしたほうがいいということがよくわかりました。だから今後は可能な限り、ここで暮らしていきたいと思っています」
では、もしも将来、自身が要介護状態になったときには、どうするのだろうか。
「そのときは、かつて母がお世話になった老人ホームに入れていただくことが決まっているんです。今は経営者もお孫さんの代になっているのですが、そこを題材に本を書いたことで、私を『功労者』と言ってくださっていて(笑)。今もときどき訪ねては、食事代を払ってご飯だけ食べさせてもらったりしています」
高齢者の住まいについて、取材や自身の経験を通していえることがもう一つある。
「どこかの施設を終の住み処にしようと思うときは、『お試し期間』を必ず設けたほうがいい。自分がそこで暮らせるかは、見ただけではわからないもの。莫大なお金を払ってから後戻りできないとなったら悲惨です。後戻りできる道はできるだけ残しながら、ゆっくり決めたほうがいいと思います」
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ここが終の住処かもね
1650円/潮出版社
都会から「サ高住」に移住したカヤノ。だが70代の今思うことは……。自身の「サ高住」での体験をもとに書かれた著者最新の小説。
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撮影/柴田和宣(主婦の友社)
※この記事は「ゆうゆう」2025年9月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
