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【あんぱん】八木(妻夫木聡)のモデルはサンリオ創業者!?朝ドラファンが見逃せないエピソード分析

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田幸和歌子

【あんぱん】八木(妻夫木聡)のモデルはサンリオ創業者!?朝ドラファンが見逃せないエピソード分析

「あんぱん」106回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。漫画家のやなせたかしさんと妻の小松暢さんをモデルに、激動の時代を生き抜く夫婦の姿を描く物語「あんぱん」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

漫画家としての代表作は、なし……

国民的作品『アンパンマン』原作者やなせたかしの妻・小松暢をヒロインとして描くNHK連続テレビ小説『あんぱん』の第22週「愛するカタチ」が放送された。

本作の放送も気づけば残りあと1ヶ月ほど。前週ラストでいよいよその姿が登場した「太ったおんちゃん」と、のぶ(今田美桜)に言われた「アンパンマン」の原型らしきものは、それでもまだ世の中に登場できていない。

この、おなかをすかせた人にあんぱんを配って回る「太ったおんちゃん」を、嵩(北村匠海)は「僕の考えたヒーロー」として出版社に持ち込んだものの、けちょんけちょんに言われてしまったそうだ。健太郎(高橋文哉)も、たくや(大森元貴)にも、それぞれ、
「これはヒーローじゃなかやろ」(健太郎)
「これはおじさんですね」(たくや)
と言われてしまう始末だ。

世は『オバケのQ太郎』や『リボンの騎士』が大人気となるような漫画ブーム。さりとて嵩といえば、仕事はますます忙しく、テレビ出演による知名度は上がったものの、漫画家としての「代表作なし」、それがコンプレックスのようにもなっていた。

いっぽうで、作詞家として、詩人としての柳井嵩は順調だ。母の登美子(松嶋菜々子)が「漫画家をやめて、作詞家になったらどうかしら?」と思わず言ってしまうのもよく分かる。本人がやりたいことと、世の中に認められることが違うことはよくあるのだろうし、本人のじれったい気持ちもよく分かるところだ。

八木(妻夫木聡)は嵩に、「お前はもっと詩を書け!」と命じる。美しいものを美しいと思い、悲しみに寄り添うこともできる。「お前の詩は子どもでも馬鹿でもわかる」「全ての人の心に響く抒情詩」だと、八木なりの賞賛をしたあとで、湯飲みや皿に嵩の絵と詩を入れようと提案する。八木のモデルは、サンリオ創業者の辻信太郎氏だとされている。現代に続く世界的キャラクター雑貨ブランドを作り上げた人物の言葉とすれば、八木の直感はさすがとしか言いようがない。

【あんぱん】八木(妻夫木聡)のモデルはサンリオ創業者!?朝ドラファンが見逃せないエピソード分析(画像2)

「あんぱん」第107回より(C)NHK

実際にこの嵩の絵と詩を入れた商品はヒットし、フリーのライターとして活躍していた蘭子(河合優実)も気付けば八木の会社の経理を手伝うようになっていた。「もっともっと詩を書け!」と要求する商売人の八木、それに応える嵩。その忙しさに、のぶは嵩の身体を心配するが、
「大丈夫。漫画を描くみたいに言葉がどんどん浮かぶんだ」
と笑う。

嵩が言うには、これまで出会った人、寛(竹野内豊)や千代子(戸田菜穂)、ヤムおんちゃん(阿部サダヲ)、千尋(中沢元紀)、清(二宮和也)、そしてのぶ……それが嵩の書く詩の源なのだという。みんなの顔を思い浮かべれば、言葉がどんどん浮かんでくるのだと。これは今までこの作品で描かれてきた〝柳井嵩〟という人物の性格を凝縮した場面のようでとても印象に残るやりとりだった。

「他人に見せるものではない日記のようなもの」と言ってのぶに見せた詩の一節、
<ボクは、愛する あなたを キミを トンカツを>

これが実に嵩らしく感じ、八木の誉め方の意味もよく分かる気がした。

そして八木は「九州コットンセンター」の新事業として出版部門の創設を決意、その第一弾として嵩の詩集を出すことを宣言した。

八木の直感は当たり、詩集『愛する歌』は好調な売れ行きとなる。

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