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【あんぱん】八木(妻夫木聡)のモデルはサンリオ創業者!?朝ドラファンが見逃せないエピソード分析

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田幸和歌子

「二人の母」への思いを込めて

そんなある日、嵩にファンレターが届く。差出人は小学生の女の子。名前は「中里佳保」。この名前に、ピンときた視聴者は少なくなかったはずだ。『あんぱん』の脚本家、中園ミホは、実際に少女時代にやなせたかしと手紙を通じた交流があったことを公表している。その役名からも、これは中園本人をモデルとした女の子で、自分だから書ける、自分にしか書けないやり方で、嵩の人生に影響を与える局面が到来した。

嵩の家を訪問した佳保(永瀬ゆずな)は、ある意味正直、ある意味空気が読めない女の子で、嵩たちの住む家を「オンボロ」と言ったり、出されたお茶ではなくサイダーはないのかと言ったりし、嵩とのぶにとって大切な意味をもつ「あんぱん」を、「お客さんが来たのにケーキとかじゃなくてあんぱん出すんだよ? お金なくて大変なんだよ」と言うような辛辣なキャラクターだ。

そんな佳保は、代表作を描いてくれと言ったものの、「そっか、ないのか」と、一番指摘されたくないことを言う。しかし、口ではそう言うものの、父を亡くし泣いてばかりいたところを救ってくれたのが嵩の詩だったのだと、付き添った祖父の砂男(浅野和之)が明かした。

【あんぱん】八木(妻夫木聡)のモデルはサンリオ創業者!?朝ドラファンが見逃せないエピソード分析(画像3)

「あんぱん」第109回より(C)NHK

今のところ漫画の代表作無し、それでも嵩の言葉は、作詞した歌も含めて、すでに多くの人を救ってきている。嵩が持ち続けるやさしさは、おなかをすかせた人にあんぱんを配る「太ったおんちゃん」のように、世の中にたくさん配られていたのである。

「何か好きだったよ。カッコ悪いけど」
帰り際、その太ったおんちゃんの絵について、佳保はこう感想を告げた。
そして、
「やないたかし先生、めげずに描きなよ!」
と笑顔で言い去っていく。

絵に描いたようなツンデレぶりだが、出版社にも健太郎たちにも理解されず、好きだと言ってくれるのはのぶだけだったこの〝ヒーロー〟の理解者をここに持ってくる、自身を投影した女の子に言わせ、嵩に勇気をくれるというつくりは、さすがヒットメーカーといったところだ。

【あんぱん】八木(妻夫木聡)のモデルはサンリオ創業者!?朝ドラファンが見逃せないエピソード分析(画像4)

「あんぱん」第109回より(C)NHK

その後、〝オンボロ〟だった家からマンションに転居し、ラジオドラマ『やさしいライオン』の脚本を仕上げた崇は、そこに「二人の母」への思いを込めたものとして仕上げる。これもまた、嵩のやさしさが投影された泣ける作品だ。放送を聞く登美子、千代子、二人の母。そして、売れっ子漫画家・手嶌治虫も仕事部屋で聞いていた場面が挿入されたことも、この先に余韻を残すような演出で印象に残る。

ラジオドラマ放送後、マンションの窓から感慨深げに夜空を見上げる嵩とのぶ。この夜空の下、また嵩のやさしさは多くの人に届けられたのだろう。

【あんぱん】八木(妻夫木聡)のモデルはサンリオ創業者!?朝ドラファンが見逃せないエピソード分析(画像5)

「あんぱん」第110回より(C)NHK

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