小さな生活道具店 ecru店主【桐野恵美さん・58歳】自宅を活用した新しい働き方とは?
人生の後半、新しい自分に出会うために選んだのは、ひとり海辺の町で暮らすこと。そこで巡り合った古民家は、いつしか「好き」を分かち合う仕事の場となり、人々が集う温かな空間へと育ちました。自宅を特別な場へと育んだ桐野恵美さんの暮らしに、未来を拓くヒントを探します。
プロフィール
小さな生活道具店 ecru店主
桐野恵美さん 58歳
きりの・えみ●1967年生まれ。
2019年、神奈川県・葉山町に「小さな生活道具店 ecru」をオープン。
「自分を見つめるretreat」「暮らしとごはん菜食料理教室」などを開催している。
インスタグラム@ecruhomesupply
直感を信じて出合った家が新しい仕事の舞台に
海にほど近い路地裏に佇む、一軒の古民家。光が柔らかく差し込む縁側、昭和の面影を残す型板ガラス。穏やかな時間が流れるこの家に、桐野恵美さんはひとりで暮らし、「小さな生活道具店 ecru(エクリュ)」を営んでいる。この店を始めたのは51歳のときだった。
「40代に入った頃から、『〇〇さんの奥さん』と呼ばれる自分に違和感を覚えるようになったんです。何だか彼の妻を演じているような、自分が自分ではないような気がして。このままではいけない、自分の人生を生きなければ、と強く思うようになりました」
夫と話し合いを重ね、50歳で離婚が成立。桐野さんはかねてから憧れていた海辺の町へと向かった。
「昔から古い生活雑貨が好きで、漠然と『いつかお店ができたら』とは思っていました。それが家探しの途中でこの家に出合い、玄関に立った瞬間、ここでお客さまを迎えている自分の姿が脳裏に浮かんだんです。その瞬間、『よし、ここに住んでお店をやろう!』と心が決まりました」
